長編

□しらじらと明けていく夜14
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「貴様…」

男が怒りに震える唇を開き掛けた、その時だった。
ホテル入り口近くの窓越しに、青白い炎が浮かび上がるのが見え、虎徹は無意識に視線をそちらへとやる。

(あれは…?)

ヤバい!と虎徹の本能が警鐘を鳴らし、彼はマートンにこの場を動かぬよう指示して咄嗟にホテルの外へと走り出た。

(あの炎は恐らく…)

虎徹の想像が正しければあれはルナティックに違いない。
狙いはともかく、すぐに対処せねばホテルの利用客に被害が出るかもしれない。


「お、おい!いきなりどうしたんだ?」
「説明は後で!とにかく今は…」

後を追いかけてきたマートンにホテルへと戻るよう呼び掛けようとして、炎の矢が彼に向けて放たれたことに虎徹は気付いた。

「危ない!」
「ヒィーッ!」

能力を発動した虎徹が寸でのところで彼を庇い、移動する。

「お前、やっぱりルナティックか!?」
「ワイルドタイガー、貴様に用はない。そこをどけ」

少し離れた建物から、ルナティックがボウガンを構えて立っていた。

「私が用があるのはその、後ろに隠れている罪人だけだ」

マートンは小さな悲鳴を上げると、虎徹の後ろに必死に身を隠す。

「なに…!?」
「さあ、隠れてないで出て来い。そして己が罪を認め、裁きを受けるがいい」

ルナティックはマートンに照準を定めたまま青白い炎をたぎらせ、じっとターゲットを狙うチャンスをうかがっている。
そんな相手から男を守るかのように、虎徹もまたその場を一歩も動こうとはしなかった。

「た、助けてくれ!」
「俺の側を離れないで下さい」

情けない声を上げてすがりつくマートンを背後に庇いながら、虎徹は低く身構えた。









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