長編

□しらじらと明けていく夜16
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「…お前、ちょっと変わったな」
「そうですか?」
「以前のお前さんならきっと、迷惑だって即答してただろうな」
「……」
「いい感じになってきたと俺は思うんだけど、もーちっと肩の力抜いてもいいんじゃねーの?」

虎徹の言葉に今度はバーナビーが苦笑する番だった。

「そういうの、苦手なんです」

リビングへと戻る彼の後を虎徹もまた、追いかける。

「僕は両親を殺されてからずっと独りで生きてきました。ましてや、犯人への復讐で頭がいっぱいでしたからね」
「そっか…そうだったな」

床に座り込んだ虎徹は苦い顔でバーナビーの注いでくれたワインを飲み干した。

「だけどよ、お前、アカデミーではモテてたんだろ?彼女ってか、好きな子くらいいたんじゃねーの?」
「それこそ、そんな余裕も暇もありませんでしたよ。ウロボロスの情報を集めるのに時間はいくらあっても足りませんでしたから」
「……」

今度こそ、何も言えずに黙り込んでしまった虎徹にバーナビーはフッと息を吐いた。


「両親を亡くしてから、僕に愛情を注いでくれたのはマーベリックさんとサマンサおばさんだけでした」

そして、と一度間を置いて言葉を続ける。

「今はあなたがこうして僕を気にかけてくれる」
「バニー…」
「正直、僕は今まで人を好きになるという感情がどんなものだかよく分かりませんでした」
「……」
「でも、あなたと出会って、あの男とあなたの関係を知ってから僕は変わった。あの苛立ちが嫉妬だと指摘されて初めて僕は自分の気持ちに気付いたんです」

バーナビーは真剣な眼差しで虎徹を見つめると、珍しく饒舌に語り続けた。








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