捧げものと企画文

□彼氏と彼氏の恋愛事情(R)
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「鏑木・T・虎徹の場合」





最近、俺には気になる奴がいる。

仕事上のパートナーである、相棒のバニーだ。
コンビを組んだ当初は生意気でいけ好かない奴だと思っていたけど、ようやく分かり合えるようになってきた。(と、俺は思ってる)

ところがつい先日、とんでもない夢を見てしまい、自分でもどうしていいか分からなくなっている。
その内容というのが…。

俺がバニーちゃんと、その‥セックスしてる夢だ。
ぶっちゃけ、なんつーか俺があいつを抱いてるっていうもので…。

誤解の無いように言っておくが、俺にその気はない。
野郎に今まで興味を持ったことなんてないし、どっちが好きかと聞かれれば「そりゃ女性だろ」と当然答える。
もちろん、嫁さん以外の女性に惚れたことはないけどな。

それなのに…。
それなのに、だ。
なんであんな夢を見たんだろ、俺。




『虎徹さん、来て‥』
『バニー‥』

普段のあいつからは考えられないような甘い声が俺の名を呼び、誘われるまま触れた肌は心地よかった。

『‥んっ‥』

自然に交わしたキスは嫌じゃなかったし、何より素直に俺を求めるバニーは可愛くて‥。




「…バカか、俺は」

夢の中の痴態を思い出し、思わず顔が熱くなる。
ただの欲求不満なら、たとえ夢の出来事だとしても大切な相棒に手を出したりはしない。…はずだ。

それってつまり…。
俺はバニーとそういう関係になりたいってことなのか。
どうしよう、友恵。
俺、もしかしたら好きな奴が出来たかもしれない。

―それ以来、俺はバニーちゃんの顔がまともに見られず、あいつを避けるようになってしまった。



  ***



その日も夕飯をと誘われたのだが、何だかんだと理由を付け避けるように帰宅した。
そして自己嫌悪のまま酒を煽り、いつしかうたた寝をしていた俺は玄関チャイムの音で目を覚ました。

(こんな時間に誰だよ‥ったく)

繰り返し鳴らされるチャイムとノックの音に根負けして、俺は仕方なく玄関のドアを開ける。

「…どちらさんですか?」

言い終わらないうちに勢いよくドアが開いて、険しい表情をしたバニーが勝手に中に入り込んできた。

「すいません、こんな時間に」
「どうした?」
「あなたに話があって‥」

思いつめた奴の様子はどう見ても尋常じゃない。

「とりあえず、中に入れよ」

招き入れたバニーをソファに座らせ、気持ちを落ち着かせるためにと作ったホットミルクを差し出した。

「話って何だ?」
「単刀直入に聞きます」
「おう」
「あなたは僕のことが嫌いなんですか?」

ブーッと自分用に入れたコーヒーを思わず、吹いた。

「本当はコンビを解消したいと思って‥」
「ちょ、ちょっと待て!」

いきなり何を言い出すんだよ、こいつ。
単刀直入にも程があるだろ!と思ってから、ここ最近の自分のバニーへの態度を思い出した。
…あー、こりゃ完全に誤解してんな。

「何でそんなこと思ったんだ?」
「夢を見たんです」
「夢?」
「あなたが僕にコンビを解消したいって言ってきて‥」
「‥それで、心配になったのか?」

だって、あなた僕を避けてるでしょう?そう続けられた言葉に、俺はやはり原因が自分にあることを知った。
不安定に揺れる瞳を見つめ返し、そっとバニーを抱き締める。

「‥安心しろ。俺はお前の相棒辞める気なんざねえから」
「虎徹さん‥」
「誤解させて悪かった」

正直に夢の話をするべきか迷う俺の耳元で、不意打ちのようにバニーが囁いた。

「あなたが、好きなんです」

あぁ、そうか。奇遇だな、俺もだよ‥って。

「ええ!?」

途端に触れているあいつの匂いや感触を意識してしまい、体中がカッと熱くなる。
どう返事していいか分からず、黙ったままの俺の体をバニーがますます強く抱き締めてきて。
年甲斐もなく、胸がドキドキする。
もうこれ以上、自分の気持ちを隠すことは出来ないみたいだ。

「‥あのさあ、俺もお前のこと‥その、」

あんなにも思い悩んだ日々は何だったんだろう。

「好きなんだ」

俺はいともあっさりと、自分の本当の気持ちに白旗を揚げた。





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