ゼルダ短編

□桜のように
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「ギラヒムさまー」

可愛らしい声で私を呼ぶアノメル
マスターが使っていた小刀の少女

本来、マスターの所有物であったはずなのに
何故かアノメルはマスターより
私に懐いていた

そう、昔から

「なんだね?」

仕方なく振り向いてあげると
至極嬉しそうに笑う

「見てください、お花ですよ」

アノメルは何故か手に花束を持っていた

「………」

「マスターが帰ってきちゃうと
お花見れなくなっちゃいますから」

魔族らしからぬ発言に
少しばかり怒りがこみ上げる


「お前はマスターに何ということを…」


怒りに震える私に、アノメルは小さく
悲鳴をあげる

「だって…アノメルは…」

そこまで言ってアノメルは口を閉ざす

黒い瞳が憂いの色をたたえる


「なぜ…そんなことを…」


「あ、ギラヒム様!
この花ってなんだか知っていますか」


アノメルはにこにこと笑いながら
ワタシに渡そうとしたらしい花束を
愛おしそうに愛でる


「シバザクラって言うんですよ」


濃いピンク色の花びらがアノメルの
黒い髪と黒い瞳に
不思議とよく似合う


丁度その時、ボコブリンがワタシの足をつつく

「ぎゃあ、ぎゃあ」

「あの小娘を捕らえただと?今すぐ行こう
アノメル、お前はここにいるんだよ?」

アノメルの瞳がゆらりと揺らぐ

「わかりました」

ワタシはアノメルに背を向ける




ずっと向こうで

何かが潰されるような音がした気がした

 
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