NOVELS

□幸福論
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「ふわあぁ……バニー、朝飯何がいい?」

午前9時。休日の朝、先に起きるのはいつも虎徹の方だった。

「おい、いい加減起きろって」
「………」
「バニーちゃーん……?おーい……」

いくら声を掛けても、隣で寝ている低血圧バーナビーが起きる気配はない。しかしこれも、2人にとってはいつものことだった。

「ったく……………、?」

虎徹はベッドから上体を起こすと、ふと気になって、自分に背を向けて寝ているバーナビーを見遣った。
その白い肌に残されているのは、昨夜の情事の激しさを滲ませる、赤い爪の跡。

「!……ッ……」

無意識とはいえ、間違いなく自分がつけたであろう印に、虎徹の体温は一気に上がる。見なけりゃよかったと唇を噛んだが、なぜだかそこから目が離せなかった。

彼は、本当に美しい。
薄いシーツからのぞく背中には、筋肉が程良くついていて無駄な所がほとんどない。かといって男臭いがっちりとした感じは持ち合わせておらず、むしろ女性的な色香を醸し出している。首筋から腰、爪先までのラインも完璧で、寝息を立てていなかったら、彫像か何かかと勘違いしそうなほどだった。

「うっわー……」

今更ながら認識してしまった恋人の美しさに、虎徹は言葉にならない溜息をつく。

「本当に、寝てるよな……?」

虎徹はそっと身を屈めると、美しい金髪からのぞいている柔らかそうな耳に、殆ど無意識に、そっとキスを落とした。

「ん……」

鼻を近づけると、甘いシャンプーの香りがする。自分も同じものを使ったはずなのに、バーナビーからのそれは、虎徹には媚薬のように感じられた。

「……んだあっ!何してんだ、俺っ……!」

触れるだけのキスだったが、途端に背徳感と一種の興奮が、虎徹の体中を駆け巡る。
――いい年こいて、寝ている恋人に、キスだなんて。
急に恥ずかしくなって体を離すと、虎徹は慌ててベッドから抜け出し、バーナビーに背を向けた。

しかし

「どこ行くんですか」
「う、わあああっ!!?」

振り返ると、寝ていたはずのバーナビーがむくりと起き上がってきた。しかも虎徹を見て、してやった顔で笑っている。

「お、お、おおまえっ、いっ、いつから、起きっ……!!?」
「あなたが僕に朝食のことを聞いてきた辺り、ですかね」

それって、最初からじゃないか……!
寝てると思い込んでしていたことが実は相手にバレバレだったと知り、虎徹は愕然とした。

「嘘……だろっ……あ、じ、じゃあ……!」
「はい、もちろん気づいていましたよ。虎徹さんが僕をずっと見つめていたことも」
「う、わっ!?」

バーナビーは、羞恥心で棒立ちになっている虎徹の腕を掴むと、いきなり彼をベッドに押し倒した。しかし、慌てる虎徹に関わらず、バーナビーはニヤニヤを隠そうともしない。

「うわ、ちょっ……!?お、おいっ!!」
「僕の耳に、キスしたことも」
「ひっ……!」

耳元で囁かれて、虎徹の顔は更に赤く染めあがる。これじゃあ丸きり口説かれている女じゃないか、と自己嫌悪に陥りつつも、感情を抑えることはできなかった。

「ば、ばかっ!朝っぱらから何盛ってんだよっ……!?」
「誘ってきたのはあなたでしょう」
「なっ……!俺はんなことしてなっ……ひあっ!?」

虎徹は必死で反論しようとするが、それはバーナビーが下着越しに虎徹の陰部をスルスルと撫で始めたことで、止まってしまった。

「な、んだよっ!いきなりっ……!?」
「朝立ち、ですか。全く……」
「ち、違っ……!これは、っ……!」

布越しとはいえペニスを扱かれる感覚に、虎徹はぶるりと全身を震わせる。途端に体中に熱が回って、頭が真っ白になった。

「は、ふあっ、ちょっ……!」


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