NOVELS

□あー、もうっ!
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AM10:02

「いらっしゃい、バニー!」
「おはようございます、虎徹さん」

今日は、バーナビーの誕生日。
恋人でもある相棒を祝うべく、虎徹は朝から彼を自宅へと招待していた。

「さ、上がって上がって」
「お邪魔します」

時間通りにやってきたバーナビーを部屋に通し、ソファに座らせる。そして自分もその隣に腰掛けると、虎徹は改めて彼に向き直った。

「とりあえず……ハッピーバースデー、バニーちゃん!」
「!、はい、ありがとうございます!なんか嬉しいです、とても」

目の前の恋人に祝いの言葉を述べ、今日何回コレ言うかな、と言って照れ笑いを浮かべる虎徹。
そんな虎徹に、バーナビーは突然、ちゅ、と触れるだけのキスをした。

「!!?お、おい!」
「ふふ。いいじゃないですか、誕生日なんですし」
「そ、そうだけど……」
「それに心配しなくても、本番は夜のお楽しみにしておきますから」
「っ……!わ、分かったよ……」

顔を赤らめる虎徹に、バーナビーは心底嬉しそうな笑みを浮かべた。



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この日の為に、事前に2人で予定を立てた。
午前中は部屋でのんびりして、軽く昼食を取る。午後はマーケットまで食材の買い出しに行き、それから2人でちょっと豪華な夕飯を作る。それが食べ終わった頃には、先日仕事帰りに2人で選んだ特注バースデーケーキが、ゴールドステージの有名なパティスリーから届けられる事になっているので、それでバーナビーの誕生日を再度祝う。そしてその後は……ご想像にお任せしたい。

買い物やテーマパークに行く事も考えたが、それはさすがに恥ずかしいこと、さらにバーナビーが「2人きりで過ごしたい」と要望を出してきたことから、最終的に虎徹の家で1日過ごすことになった。
それにしたって、男2人でこなすには甘すぎる計画ではあった。しかし、正直これでは普段とほとんど変わりはしない。それを虎徹が指摘すると

『でもお前、ホントにそれでいいのか?もっと誕生日らしいことしたって……』
『いいんですよ。それに……』
『?』
『……僕の誕生日に貴方が側にいてくれるなら、それだけで十分幸せです』

そう真面目に言われて、虎徹が耳まで真っ赤になったのは言うまでもない。

更に、実は虎徹はバーナビーには内緒で、ささやかなサプライズプレゼントも用意していた。「プレゼントは虎徹さんで」などと言われてはいたが、いかんせんそうはいかない。虎徹なりに考えて、バーナビーが喜びそうなものを用意した。
渡した時のバーナビーの顔を想像して、虎徹はつい口角が上がってしまう。

「?、何にやけてるんです?」
「あ、いや、何でもねえよっ」
「何ですか、教えてくださいよ」
「やーだねー!」

そう言ってくすくすと笑い合う。付き合い始めてから初めてのバースデーということで、お互いいつもよりも少し浮かれ気味だ。

「んじゃ、とりあえずコーヒーでも……」

淹れようかと虎徹が立ち上がったその時、テーブルの上に置いてあった虎徹の携帯からピピピ…と着信音が鳴った。

「ん……?あ、ロイズさんからだな……」
「、何かあったんですかね?」

嫌な予感が頭をよぎったが、虎徹は携帯を手に取ると、仕方なく通話ボタンをピ、と押した。

「……はい、もしもし」
『ちょっとコテツ君!今月の収支報告書、どうして上がってないんだい!?月末までに出してって、毎月言ってるよね??』
「あ、やべ!」

忘れていた、という口調の虎徹に、ロイズから叱責の声が、隣からはバーナビーの溜息が聞こえた。

『やべ、じゃないでしょ!大体君はいつもいつも……』
「あーすんません……それ、明日じゃダメっすか……?」
『それ先月も聞いたから。いいから今すぐ会社に来なさい!』

虎徹の返事も待たずに、電話をプツッ!と切られる。有無を言わさぬロイズの態度に、虎徹も諦めの表情を浮かべると、仕方なくいつものハンチングを手に取った。

「悪い、ちょっと出てくるわ」
「全く……一緒に行きましょうか?」

横で聞いていて、大体の状況を察したバーナビーは、呆れ笑いを浮かべながら申し出た。

「いや、でも……せっかくの休みなのに、お前にまで仕事させるわけにもいかないだろ」

虎徹は悪いと思って断ったが、バーナビーは構わずソファーから立ち上がった。

「いいですよ。虎徹さん1人より、2人でやったほうが断然早いでしょうし」
「なっ!そっ、そうだけど、でも……」
「それに……今日は虎徹さんと、できるだけ一緒に居たいんです」
「そっ……!そう、か……」

赤くなった顔を隠すために、虎徹は帽子をぐいっと深くかぶった。




AM11:08

2人が会社に到着すると、事務室から丁度ロイズが出てくる所だった。

「!バーナビー君、丁度よかった!」
「?」

ロイズはバーナビーを見るなり、彼にスマイル全開で近付いてきた。

「どうかしましたか」
「実は、君に急な雑誌の取材が入ってね。今連絡しようと思ってた所だったんだよ」
「っ……今から、ですか?」
「そう。悪いんだけど、ちょっと行って来てくれないかなぁ?」
「あ、いえ、今日はちょっと……」
「頼むよ〜!すぐ終わるとおもうから!ねっ?」

ロイズの頼みに、バーナビーは顔を一瞬歪ませたが、虎徹の行ってやれよ、という何気ない視線を受け、「分かりました」と笑顔で応えた。

「ありがとう〜!それじゃ、いつものビルで待っててもらってるから」
「はい、それでは」

バーナビーは出口へ向かうため、来た道を戻ろうと踵を返す。そして振り返り様、ロイズには聞こえないように、虎徹にそっと耳打ちした。

「家で待ってて下さい。できるだけ早く終わらせますから」
「!……ん」

虎徹は口元を動かさないように返事をすると、去っていくバーナビーの足音を聞きながらふっ、と笑みをこぼした。

「コ・テ・ツ・君?何を笑ってるんだい……君は報告書、よろしくね」
「あー、へいへい……」

明らかにバーナビーに対するものとは違うトーンで言い放つロイズに、虎徹はハァ、と溜息をついた。
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