ハリー・ポッター短編

□スウィート ティー タイム
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それは甘い甘い紅茶の時間…



スウィート ティー タイム



真夜中、12時もとうに過ぎてホグワーツは静まり返っていた。

そんな時分、この学校で『闇の魔術に対する防衛術』を受け持つ男は 小さく音を立ててティーカップをソーサーに置いた。

“ふぅっ”と意味もなく息を吐いて 彼の瞳は空を泳ぐ。


――――― トントンッ


少し申し訳なさそうなノックに、彼は彷徨わせていた視線を扉に留めて 少し不思議そうな顔をする。

しかし、すぐに優しく口元を歪めるのだった。


「どうぞ」


真っ暗な廊下に、部屋の明かりが細く射す。


「こんな時間にどうしたのかな?」


誰もいない その場所に彼は優しく問いかける。


「アヤメ」

「ルーピン先生…」


答えながら、少女はゆっくりと“透明マント”を脱いだ。

アヤメが呼んだ名に ルーピンは少々不機嫌になって問い直す。


「ふたりの時は?」

「リーマス」


ルーピンが満足そうに、機嫌よく頷くと アヤメは照れくさそうに俯いた。



「それで…」


ルーピンはアヤメにそっと歩み寄り、優しくソファに導く。


「今夜はどうしたんだい? 」


そして自らもその隣に腰掛けると、アヤメの黒い瞳をじっと見つめた。


「眠れなかった?」


アヤメも優しく弧を描いた鳶色の瞳を見つめ返して無言で頷いた。


この人には なんでも分かってしまうんだ と思った。

でも、彼には全てお見通しなのだと知っていながら嘘を吐いた。
 
 
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