ハリー・ポッター短編

□温もり
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息を吐けば白く凍てつく。

そんな冬の日。



温もり



アヤメは時計塔から凍りついた湖を眺めていた。

マフラーをしっかりと巻いていなくては湖もろとも凍ってしまいそうな冬。

そっと澄んだ空気に息を吐けば白く煙った。


「ハリー…」

「なんだい?」


零した呟きを拾うように彼は現れた彼にアヤメは振り返って目を見開く。


「わっ!ハリー!!!」

「そんなに驚かなくても…」

「あ…ごめん…」

「んーん、良いよ。」


ハリーは優しく笑ってみせるとアヤメの隣に並んで湖を見つめた。

なんとも言えない距離。


「寒いね…」

「うん、本当に。」


―――― 沈黙。


すうっと息を吸い込めば肺が冷気に満たされてジンとする。


「アヤメ?」


名前を呼ばれて“なに?”と無言で首を傾げる。

ハリーは依然として湖に視線を向けていたがアヤメの仕草を感じ取って続けた。


「寒い?」

「え、うん…寒い。」


さっき言ったばかりのことを尋ねるハリーにアヤメは少し戸惑う。

そんなアヤメを余所にハリーはくいっと冷えた眼鏡のフレームを押し上げた。


―――― ふわりと体が半回転。


凍てついた冬の景色は視界から姿を消した。


その代わりに伝わってきたのは暖かい温もりだった…


「…っ…/////」


自分が今“どこに居るのか”を理解したアヤメは、ただ真っ赤な顔を埋めたまま固まっていた。


「アヤメ…?」

「な、に…?」


今度は声で答えるとハリーはさっきと同じように続けた。


「寒い?」

「あったかい…」

「そっか」


アヤメはそのままハリーの腕に大人しく収まることにした。
 
 
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