ハリー・ポッター短編
□秘密のチョコレートを。
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伝えることさえ許されないその想い。
今、甘く切なく 唯々 ひとり、語りましょう。
秘密のチョコレートを。
「それじゃ、私もう授業に行かなくちゃ」
ハーマイオニーはふわふわの栗毛を揺らして 私のベッドの傍に置いた椅子から立ち上がる。
しかし、いつもテキパキと行動する彼女にしては幾分も緩慢であった。
「うん、ありがとう」
「なにかあったら、あー…、えぇ、すぐに飛んでくるわ!」
「もうっ…ハーマイオニーったら!私は大丈夫だから、心配しないで?」
ハーマイオニーにとって唯一無二の親友、アヤメは心配性な彼女に、少し咳き込みながらも笑ってみせた。
「無理しちゃだめよアヤメ!!!」
「大丈夫だってば!ほら、次魔法薬学だよ。急がなきゃ」
魔法薬学教授はアヤメには甘いが グリフィンドール生、とりわけハリー、ロン、ハーマイオニーには厳しいのだ。
「えぇ、わかってるわ…でも、あなたが熱を出してるっていうのに私…」
「いってらっしゃい!私なら大人しく寝てるから」
「絶対よ?」
「うん、絶対」
指切りして微笑むと ハーマイオニーは観念したのかぎっしりと教科書と本が詰まった鞄を肩にかけた。
「授業が終わったら飛んでくるわ!」
「ん、待ってるね。」
アヤメはベッドから手を振った。
ハーマイオニーは何度か名残惜しそうにこちらを振り返ったがやがて姿を消した。