ハリー・ポッター短編

□バカフタリ
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「もう!シリウス ジャマしないでよ!!!」


アヤメは遂に声を張り上げた。



バカフタリ



「アヤメ、時間」

「―――っ!!!」


シリウスが指さした時計に はっと口を噤み、恨めしげにその整った顔を一瞥した。

それでも尚、シリウスは退屈そうに欠伸をする。

この程度で屈しはしないのだ、シリウス・ブラックという男は。


「少しくらい構ってくれたって良いじゃねぇか」


まるで犬のように、生理的に潤んだ瞳で見つめられて アヤメは一瞬ぐっと言葉を詰まらせる。

が、即座に気を持ち直すと シリウスに反論した。


「だから 勉強しないならシリウスは寝ていいって…」

「俺はアヤメと居たいって言ってんのに 直前にもなって焦ってるアヤメがわりぃんだろ?」


シリウスは面白くなさそうに胡坐を組み直す。


「つーか…お前が真面目過ぎるだけだ。」

「出来ない出来ないって徹夜する割に、毎回トップクラスの成績取ってるだろ?」

「でもやらなきゃ不安だし…」


そう、実際アヤメの成績はリーマス、リリーに次ぐ、相当に優秀なものであった。

にも関わらずまだ足りないというアヤメに シリウスは深々と溜め息を吐いた。


「ったく…困ったもんだぜ」

「シリウスもやればいいのに」


アヤメはとんとんっと魔法薬学の教科書を叩いてみせるが シリウスは眉をひそめて首を振った。


「俺は今のままで満足してっから良いんだよ。」

「もうっ」


心なしか、アヤメに握られた羽ペンが項垂れたように見える。


「でもシリウスらしい。」

「サンキュー」

「貶してるわけじゃないけど、褒めてもないって分かってる?」

「おー」


生返事をして、シリウスはまた大きく欠伸をした。


(そんなに眠いなら先に寝て良いのに…ばか…)


文句を言いながらも 学年末試験の度にこうして談話室での勉強に付き合ってくれる彼が愛おしくて…

アヤメはそれ以上シリウスに文句を言うのをやめた。

談話室には アヤメが羽ペンを走らせる音と、シリウスの欠伸が時々聞こえるだけだった。
 
 
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