ゴーカイジャー短編

□超えられない壁
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ゴーカイガレオンは星の海を行く・・・



超えられない壁



青い空に良く映える赤い船は、今は夜闇にその船体を溶かすように静止している。

その船で寝起きする5人の宇宙海賊もまた、寝静まっているようだった。

海賊とはいえ、戦隊ヒーロー。早寝早起きはよい子の基本!

と、彼らが思っている訳ではないだろうが…


そんな船内だったが、ただひとりロビーにある自分の席に足を組み、考え事をする男の姿があった。

―――― キャプテン・マーベラス

大雑把な性格ではあるが、船員を束ねる頼もしい船長だ。

だが、そんな彼も悩みのひとつやふたつ(もしかしたらそれ以上かもしれない)くらいは持ち合わせていた。

その悩みは他でもない。

溺愛する彼の妹・アヤメのことだ…


「くそっ…」


悩ましげにマーベラスが足を組み替えると片側のブーツだけがコツンッと床を鳴らす。

静まり返った船内ではその音さえ大きく響いた気がして、マーベラスは内心で少し慌てた。

『アヤメを起こしてしまうかもしれない』と思ったからだ。


「んな訳ねぇか…」


なんだか虚しくなって自嘲気味に呟いた。


自分も、そしてアヤメも、もう昔のように幼くはない。

そのせいだろうか?いつもアヤメは隣にいるのに遠いと感じる。

もちろん今も昔と変わらず兄妹仲は良い。


「なんでだろうな…」


ガレオンの窓から星を仰ぎ見てまた呟く。

いつも大切に持っている写真を見つめると、今より少し幼いアヤメが 眩いとさえ感じさせる笑顔で見つめ返してくる。


(本当は気付いてんだ、俺は…)


そんな妹に対する感情が、家族に向ける愛とは異なっていることに。

でも 気付かないふりを通し続けてきた。

そんな愛情は、兄として許されるものではないと理解していたから。

“本当のこと”さえ告げられたなら、どんなに楽になるだろか?


「アヤメ・・・」


愛しいヒトの名を囁くだけでこんなにも胸が締め付けられる…

―――― 悔しかった。

昔は 誇りにさえ思った“兄”という立場に縛られて どうすることも出来ずにいる自分が…
 
 
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