賢者の石
□嵐と稲妻の襲撃者
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彩芽はなんだか怖くなった…
どうして自分が言った通りに由美がブタになってしまったのかもさっぱり意味が分からない。
何もかもが分からなくなって、彩芽は気付くと走り出していた。
(なんなの、なんなの…っ…)
今まで両親がいない孤児院での生活とはいえ、彩芽なりには平凡な人生(たったの11年だが)を送ってきたつもりだった。
それが…
自分を虐げるいじめっ子はブタに変えてしまう。
よくよく考えればあの虹だって…!
これはもうとんでもないことだと思って、彩芽は気付くと泣いていた。
さっきまで晴れ渡っていたはずの空も、いつしか分厚い雨雲に覆われて 辺りは真夜中のように暗い。
悪寒が背筋を駆け抜けるような暗闇だ…
彩芽はとにかく怖かった。
その時…
彩芽の両脇すれすれを黒い影が2つ、猛スピードで追い越すようによぎった。
「…っ…きゃあっ!」
痛い程に叩き付ける風が、そのスピードを物語っていた。