ハリー・ポッター短編
□秘密のチョコレートを。
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あとに残されたのは静けさと、忌々しい身体の怠さだった。
気のせいかハーマイオニーがいなくなったことで温度が少しだけ下がったような気がする。
「ちがう、ちがうの…」
アヤメはひとり呟いてぎゅっと目を瞑った。
(熱があるから、寒気がするだけ…)
そんな風に考えてしまう自分は可笑しいのだと、しっかり自分に念を押す。
最近は、ずっとこんな風に自分に言い聞かせて ハーマイオニーへの想いを誤魔化している。
彼女の笑顔も、優しさも、親友としての自分に向けられたものなのだ、と理解はしている。
でも、それでも…
アヤメは鉛のように重い身体をゆっくりと起こして足を床に着けた。
靴を履いていないことなど気にもならない。
そして、さっきまで彼女が使っていた椅子に意味もなく座ってみる。
(あったかい……。)
――― 嗚呼、やっぱりダメ。
たったこれだけの行為で塞き止められている想いが 今にも溢れてしまいそうだ。
――― 私はいつからこんなになってしまったのだろう。