ハリー・ポッター短編

□バカフタリ
2ページ/2ページ


「そろそろ寝ようかなぁ…」


羽ペンを置いて ぐっと伸びをする。

いつの間にか静かになった談話室を見回すと シリウスはソファーで寝息を立てていた。


「寝ていいって言ったのに…」


そっと撫でると 彼の艶やかな黒髪が、整った顔からはらりと滑り落ちた。


「綺麗な寝顔…」


ふにふにと頬を突いてみる。

本人に自覚があるのかは分からないが 何をしても絵になる彼は、女の子からとても人気があった。

ファンクラブが存在するほどに。


「ねぇ知ってる?彼女としては…すっごく不安なんだよ…?シリウス…」


彼には決して話せない胸の内…


「わたしはシリウスみたいに綺麗じゃないし…箒に乗るのも上手くない…」

「わたし…少しくらいシリウスに追いつきたいの…だから、せめて勉強くらいはできるようにしなきゃって…」


ぽつり ぽつりと呟いてみるが 少し薄めの唇は閉ざされたまま答えない。


「シリウスに似合う、素敵な女の子になりたいんだよ…?」


そんな唇を見つめていたら なんだか少し寂しくなって そっとキスを―――…


「―――…っ!!?」


突然の出来事にアヤメは目を見開く。

さっきまで寝ていた筈の彼が シリウスが 自分の頭部を押さえていた―――。


「んー!んんー!!!」


キスを“した”はずが、キスを“されて”いた―――…


「チッ…お前少しくらい大人しくしろよ!」


唇を離したシリウスは忌々しそうに舌打ちをする。


「だ…っ…だってぇ////」


状況が呑み込めずに 慌ててソファから離れようとすると手首を掴まれた。


「痛いよッ…!」

「うるせぇ」


そのまま腕を引かれ、いつの間にか体を起こしたシリウスの腕に 背中からすっぽり抱かれていた。


「いつから…起きてたの…?////」


逃げ場を失ったアヤメは顔を赤らめた。


「さぁな。」

「・・・・・。」


ぶっきらぼうな反応に何も言えずにいると ふと肩に重みを感じる。


「アヤメ…?」

「な、に…?」


耳元でシリウスの声がする。


「俺は…ずっとずっと…お前だけのだ…どこにも行かねぇよ…?」

「…っ…うん///」

「分かればいーんだよ、ばーか。」


唐突に囁かれた言葉にモゴモゴと返事をすると、乱暴に頭を掻き撫でられた。


「………シリウスの、ばか。」


回された腕に力が籠る。

その腕に、そっと手を重ねてみる。


(やっぱり起きてたんじゃない…ばか…)


内心で もうひとつ悪態をつきながら…―――。



翌朝、ソファで抱き合いながら眠るふたりを目にした グリフィンドール生は揃って溜め息をついたとか…


END...
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ