ゴーカイジャー短編

□かんだちジェラシー
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ジョーはまだ遠い雷鳴を聞きながらある部屋に向かっていた。

それは唯一ロビーに姿のなかった少女の部屋。

―――― トントンッ


「入るぞ」


ジョーは軽く扉をノックするとそっとドアノブを捻る。


「………アヤメ」


―――― どこか遠くに雷が落ちた。


「……っ…!!?」


声を掻き消した それ にびくりと肩を震わす少女を

弱々しく膝を抱える少女を

何も言わずに ジョーは優しく抱きしめた。

しっかりと回される筋肉質な腕にアヤメは ほっと息を吐く。


「ジョー…」


消え入りそうな細い声は、ジョーの存在を確かめるかのように切なく響き、雷鳴に消える。


「アヤメ」


今度は掻き消されないよう 耳元に唇を寄せて、愛しいその名を呼び返す。



―――― 刹那、少女の中で 緊張の糸が音をたてた。


はぁっと 苦しげに溜め込んだ息を吐き出すと 涙が次々に溢れ ジョーのシャツに染みを作った。


「ジョー……っ…ジョー…」


ただ ただ嗚咽交じりに自分の名を呼ぶ少女の黒髪を、ジョーはひたすらに撫でていた。


「大丈夫だ、お前には俺が付いている」

「ジョー…」


アヤメがジョーの胸に頬を寄せる。


―――― 空に閃光が走る。


白いレースのカーテン越しに、雨は激しく窓を叩いていた。

いかづちが 荒々しく何かを切り裂いた。


「俺がいる。安心しろ…」

「うん…」


ジョーの黒髪が 頬をくすぐっていた。
 
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