present
□愛してる、なんて…
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「先生、ばいばーい!」
「おう、気を付けて帰れよー!」
教師になって今年で4年目…
最初の頃は慣れないことばかりで、毎日があっという間に過ぎていたが、最近ではようやく少しずつ余裕が出てきた。
そんな矢先のことだった。
一人の女子生徒が気になるようになったのは…
「先生、数学のノート持ってきましたよ。」
「あっ…ありがとうな、雪村。」
「いえ…」
雪村千鶴…
現在俺が受け持つクラスの生徒…
そして…
「先生、分からない箇所があるんですけど…
聞いても良いですか?」
「あぁ、何処だ?」
「えーと…此処の問題なんですけど…」
俺が今、一番気になる生徒だ。
気になる…
というと御幣があるかもしれない。
正確に言えば
俺は彼女の事が好きなんだと思う。
今まで生徒に対して恋愛感情なんて持ったことは無い。
告白してきた生徒はもちろん断り続けた。
それが教師として、一番の答えだと思っていたからだ。
なのに彼女は…
俺の中にずかずかと入ってくる。
初めて彼女と喋ったその日から――…
だけど俺がこの想いを彼女に伝えることは一生ないだろう。
彼女は俺の大事な生徒でもあるんだから…
そう思ってた筈なんだけどな…
3年生最後のテストは昨日で全て終わった。
土日を挟んで月曜日にはこのテストを生徒に返さなければならない。
ほとんど徹夜作業だ…
自分のクラスの採点は後回しにして、他のクラスの採点を進めていく。
しかし、一人の生徒のテストが気になって、中々思うように採点は進まない。
後回しにしたって結局は避けることは出来ないのだが…
「……どうすっかな…」
結局、今俺の目の前にあるのは雪村千鶴の答案用紙。
かれこれその答案用紙と睨めっこして1時間が過ぎようとしている。
満点を取ったら…
一人の女の子として返事が欲しい。
そんな約束をしたのは、テストが始まる前…
初めて満点が取れたらデートして欲しいと言われた時は何かの冗談かと思っていたが…
今回はいつもとは違って本気で彼女は俺に接してきた。
そんな彼女だから俺も…
決心しようと思った。
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