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■バレンタイン小話■
2月13日 PM 8:00
「えーと…次は…」
【チョコレートレシピ】と表記された本を片手に、千鶴はバレンタインのチョコレートを作っていた。
チョコレートを渡す相手は、隣に住む幼馴染の平助である。
千鶴が、平助のことを好きだと気が付いたのは、数年前のこと…
告白する勇気などなく、幼馴染のままでも平助の傍に居られるのなら、それでも良いとずっと思っていた。
しかし、先日…
平助が女の子に告白されているところを見た途端に、その考えは何処かに消えていた。
「良し!後は…オーブンで焼き上げるだけ…
美味しく焼きあがればいいな…」
そして、2月14日――…
放課後、千鶴は平助の家を訪れていた。
「お邪魔します…」
「おう、散らかっててごめんな?」
「ううん、私こそ急にごめんね。」
そういえば、平助くんの部屋に遊びに来るのって…いつ以来だろう?
千鶴は平助のことを好きだと気が付いた日から、何だか意識をしてしまって来れなくなっていたのだ。
「…あの、これ…チョコレートなんだけど…
良かったら、貰ってほしいの…」
「え…まじで!?サンキューな!」
平助が早速受け取った箱を開ければ、そこにはガトーショコラがあった。
一口、口に入れれば…
甘いチョコレートが口の中に広まった。
「すっげー美味い!!」
「本当?……良かったぁ…」
「もしかしてさ…
これ、千鶴の手作りだったりする?」
「うん…。」
「まじで?めっちゃ美味いんだけど!
こんなの作れるなんて、すげーな…」
平助の一言に千鶴はほっと、胸を撫で下ろそうとしたが、まだ肝心な事を言っていないことに気が付いた。
「あのね…平助くんに話があるの…」
「…どうした?」
「――…好き。
平助くんのことが…好きなの…。」
勇気をふりしぼり、平助に想いを告げた。
平助を見ると、ガトーショコラをフォークに刺したまま固まっていた。
「……まじ、だよな?今の…」
「…うん…きゃっ!」
急に腕を引かれたと思えば、気が付けば千鶴は平助の胸元に収まっていた。
「へ、平助くん!?」
「すっげー…嬉しい。
先に言われちまったけど…
俺も…千鶴が好きだ。」
そして…
初めてのキスの味は…
甘い、甘いチョコレートの味がした。
end ※2012/01/31〜2012/02/29掲載