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桜の木の下で出逢った私達は、桜の木の下でさよならをした。



「……今まで本当にありがとう。
 向こうに行っても元気でね、平助くん。」

「あぁ…。千鶴も元気でな?」



中学の入学式…
桜の花が舞う中、二人は初めて出逢った。

平助と目が合った瞬間、千鶴は友人から声を掛けられるまで平助から目を離すことが出来なかった。

それはどうやら平助も同じだった様で…
二人が付き合い始めるまでに、時間はそう掛らなかった。


そして、卒業式の今日…
まだ桜の花が咲いていない木の下で、二人は別れを告げていた。



「明日、何時の飛行機?」

「17時の便だってよ。
 俺、英語喋れねーのに大丈夫かな?」



平助は、父親の仕事の都合で中学の卒業を機に海外へと行くことが決まっている。

いつ日本に戻ってこれるか分からない。
もしかしたら日本に戻ってこれないかもしれない…。

そんな状況の中、千鶴を縛り続けることは出来ないから…俺達別れよう。

平助がそう千鶴に言ったのは記憶に新しい。



本当は別れたくない。



それが千鶴の本音であった。

だが、平助の意思は固く…千鶴もそれを渋々受け入れ、二人は今日を迎えたのだった。



「千鶴、今までサンキュ!
 俺、お前と出逢えて本当に良かった。」
 


その言葉を最後に二人は…
別々の道を歩み始める。

後ろを振り返ることは決してしない。



「…私も、平助くんと出逢えてよかった。」



何処までも青く広がる空を見上げて…
千鶴は一筋の涙を零した。




春は出会いと別れの季節――…

15歳の春、私は別れを経験した。




2012/02/29〜2012/03/31掲載分
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