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□B
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※平助→千鶴
ずっと、ずっと…
昔から俺には好きな人がいる。
だけど、その人には別の想い人がいて…
きっと彼女はその人以外を好きにはならないんなんて分かってる。
分かっている筈なのに…
俺は、また彼女に恋をした――…
「平助くん、おはよう!!」
生まれ変わった俺と千鶴は、お隣に住む幼馴染になった。
母親同士の仲が良く、生まれた時からずっと俺達は一緒だった。
だけど、それだけ…
俺達の関係は【幼馴染】以外の何物でも無い。
「おはよ…千鶴。」
「眠そうだね…?
また遅くまでゲームしてたの?」
「……あぁ…
中々ラスボスが倒せなくてさ…」
この春から高校に入学した俺達は、相変わらず一緒に登校している。
周りからしたら恋人に間違えられる様なこの光景。
入学当初はよく、同級生に千鶴と付き合ってるのか?と聞かれ…その度に否定をした。
本当に恋人同士になれたら…
どれだけ良かったのだろうか?
だけど、千鶴には好きな人がいる。
その人は新選組に居た時から変わらない。
前世の記憶が無い彼女は、また…
同じ人に恋をした――…
「…ったく…
俺は何回失恋したら気が済むんだよ…」
と、口ではそうぼやくものの…
俺が昔から願っていることはただ一つ。
「平助くん、何か言った?」
「…んー?
あぁ、腹減ったなぁって…」
「えっ!?
まだ始まったばかりだよ!!」
彼女が…
千鶴が幸せになってくれること。
「あっ……」
千鶴が何かに気付き、声を上げた。
千鶴の目線を辿れば、其処には千鶴の好きな人が…俺達の数歩前を歩いている。
だけど千鶴は…
中々彼のもとへ行こうとしない。
昔も、そうだった。
声を掛ければ良いのに、中々声を掛けない。
どうして彼女は昔から…
こうも自分に自信が無いのだろうか?
「…行ってこいよ、千鶴。」
だから、俺は…
千鶴の背中をポンっと優しく押してやる。
千鶴が前へと進めるように――…
すると千鶴は驚いた様に此方を見たが…
「……うん。
ありがとう、平助くん!」
俺に笑顔でそう言うと、大好きな彼の元へと走って行った。
俺はその背中を見送って、また歩き出す。
「ったく俺も、とんだお人よしだよな…」
きっと、それは…
彼女に惚れてしまった、俺の弱みなんだ。
end ※2012/05/31〜2012/07/01掲載