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□A
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平助くんの家は、私の家とは違いこの辺りでは有名な呉服屋だ。
そんな彼と私が幼馴染だとは、誰も信じてくれない程に……







藤堂の跡取りが、毎夜遊郭に通っている。
仕事もしないで、女の所に通っている。







そんな噂が街中に流れ始めたのは、平助くんが此処に通うようになってからすぐのことだった。


平助くんが、約束を守ろうとする度に…
彼と彼の家の名前が汚れていく。













「……どうした?
 浮かない顔をしているが。」

「…っ!!申し訳ございません。」


千鶴は急ぎ空になっていたお猪口にお酒を注いだ。
あれから千鶴の生活は変わっていない。




毎夜、男に夢を魅させ、体を売る。




これが当たり前の生活なのだ。
今までの事が都合の良い夢だっただけ…






















これで、良かった。

彼には彼の相応しい場所がある。
そして、私には私の相応しい場所がある。




























『千鶴!やっと、見つけた。』

『…っ!!…うそ…
 平助くんが、どうして…』

『約束しただろ?
 お前を迎えに行くって。』



突如現れた幼馴染に、驚きを隠せず…
千鶴は戸惑うばかりだった。



『…って言ってまだ、足りねーんだ。』



千鶴を身請けする為のお金が…
彼は申し訳なさそうに、そう告げた。



『だけど、待ってろよ!
 俺が、絶対にお前を身請けするから。』



平助くんはいつもそう言って
こんな私に笑顔を向けてくれた。

だけど…

何度も何度も元気をくれたその笑顔が
私に振り向くことは、もう無い。























平助くんが来なくなってから…
街に流れていた噂は、流れなくなった。

しかし…
それとは別の噂が、この街には新しく流れ始めた。





























藤堂の跡取りが婚姻を結んだ――…


to be continued...

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