clap

□B
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貴方と離れることがこんなにも
心苦しいことだとは知らなかった。

どれだけ、後悔を重ねても
もう貴方の笑顔に出逢える筈が無いのに…





だから願いが叶うなら…





せめて夢の中だけでも
彼の笑顔に会わせて下さい――…

























「千鶴…お前に身請けの話が来た。」

「…えっ…」


それはあまりにも突然だった。
千鶴を大変気に入っていた客が、この話を持ちかけたのだ。


「身請けは、2週間後だ。」

「――…っ!!」


千鶴に拒否権などある筈も無く、身請けの話は順調に進められていった。








もうこれで…
本当に平助くんに会えなくなる。








『約束しただろ?
 お前を迎えに行くって。』

『俺が、絶対にお前を身請けするから。』

『千鶴!!大きくなったら…
 俺のお嫁さんになってくれ!』

『――…大好きだ。千鶴。』







「……私も、大好きだったよ。」







さようなら、大好きな人――…




































「今まで、本当にお世話になりました。」


2週間という時間はあっと言う間に過ぎ…
今日、千鶴はついに身請けされる。


遊郭という場所は…
時に厳しく辛い場所であったが、周りの人々は暖かく、いつも優しく支えてくれた。


だから千鶴は、最後に一人一人に挨拶をして周る。




「…あんたは強い子だ。
 必ず、幸せになりなよ…」

「………はい。」




幸せに――…



いつかそう感じることが出来るのだろうか?
大好きな人に会えない人生を進む私に…






「さぁ、千鶴…
 お前のお迎えが来たよ。」



to be continued...

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