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□初恋祈願
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「なぁ…千鶴は皆と遊ばないのか?」

「………へーすけせんせい?」


此処は薄桜鬼保育園。
今日も園児達が元気に過ごしているのだが…

雪村千鶴は一人で絵本を読んでいた。
彼女はどうも人見知りがある為か、中々他の園児と一緒に遊ばないのだ。

そして今日も、千鶴は一人で絵本を読もうとしていた…
そんな時、実習で今日から保育園に来ていた藤堂平助が声を掛けたのだった。



「千鶴はいつも、絵本読んでるのか?」

「………うん。えほん、すき。」

「外で皆と一緒に遊ばないのか?
 一人で絵本読むのもいいけど、皆と一緒に遊ぶのも楽しいぜ!!」



そう平助は千鶴に向かって言うものの…
千鶴は動こうとしなかった。



「……皆と遊ぶの嫌なのか?」

「…そ…そうじゃないもん。」

「じゃあ、先生と一緒に外行こうぜ?」

「…でもね……
 ちづる…まだみんなとおともだちじゃないもん。」

「……え?」

「おともだちじゃないのに…
 みんなといっしょにあそべないもん。」



担任から聞いたところによれば、千鶴は親の仕事の都合で、最近入園した園児だと…

きっと、まだ他の園児と幼いながらも溝を感じているのだろう…



「先生が千鶴の傍にいてやるから。
 だから、何も怖いことなんてねーぞ?」

「……ほんとう?」

「あぁ、本当だ!
 先生も千鶴と一緒で、まだ皆と友達になれていねーんだ。
 一緒に、友達になりにいこうな?」

「う、うん!!」



そう笑顔で笑った彼女は、今まで一人で淋しく絵本を読んでいた様に見えない程、可愛いものだった。


そして是がきっかけで、千鶴には沢山の友達が出来た。

……にも関らず、千鶴は平助に大変懐き、平助の傍からあまり離れようとしなかった。


しかし、平助はあくまで実習でこの保育園に来ている為、ずっと一緒には居られないのだ。
























そして、実習最後の日――…


「へーすけせんせい…
 もういっしょにあそんでくれないの?」

「そんなことねーって!!
 また皆に会いに遊びにくるからな?」

「……やくそくだよ?」


そう言って、千鶴から差し出されたのは小さな小指だった。


「あぁ、約束…」

「あとね…せんせい…」

「……ん?」

「ちづる…
 おおきくなったら、せんせいのおよめさんになりたい!!」

「――…えっ!?」

「………だめ?」



千鶴は躊躇いながら、首を傾けた。
そんな可愛い仕草をする千鶴に、平助は「だめ」だとは言えず…



「……だめ……じゃねーよ。」

「じゃあ、やくそく!!」

「……お…おう。」




まぁ…
子供の言うことだし、大きくなったら忘れてるだろうしな…


そんな甘い考えで、平助は千鶴のお願いを受け入れたのだった…






















しかし――…





















16歳になった千鶴が、保育園を訪れて平助の目の前に現れた瞬間…
あの時、安易に約束をした自分を叱りたくなった。




『平助先生…お久しぶりです。
 ……あの時の約束、覚えてますか?』



to be continued...

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