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□B
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来ない…
毎週水曜日、必ず来ていた彼女が…

今日はまだ来ていない。
現在の時刻、18時35分。
いつもならもう、来ている時刻なのに…



「へいすけせんせー。
 きょうは、ちづるちゃんこないの?」

「………そうだな…」



いつも千鶴が遊びに来るこの日を楽しみにしている園児から質問をされても、平助は曖昧にしか答えられなかった。

なぜなら…
平助自身にだって、その答えが分からないのだから。



「今日は、先生と一緒に遊ぼうな?」

「……うん。」



園児は少し不満そうな顔をしたが、大人しく平助と遊ぶことになった。


そんな園児の不満そうな顔に
……ってか俺じゃあ不満なのか?
と、担任である平助は少なからずショックを受けていた。


そして、19時30分を少し過ぎた頃に最後まで残っていた園児の母親が迎えに来て平助の仕事は日報を付けるだけとなり、職員室へと戻って行った。







「平助!」

「左之さん、どうしたんだよ?」







平助が職員室に入ると、先輩である原田が声をかけてきた。






「悪い、悪い!!
 お前に伝えることがあったんだが、すっかり忘れてた!」

「……伝えること?」

「今日、千鶴来れねーんだってよ!」

「……え?」

「委員会の仕事があるらしくてな。
 だから今日は行けないって。」

「………」

「お昼過ぎに連絡貰ってたんだけどよ…
 俺もバタバタしてて、言うの忘れてた。」




千鶴が今日来れない理由は分かったけど……




「ってかその連絡って…
 何処にあったんだよ?」

「俺の携帯だけど、それがどうかしたか?」

「………いや、何でもねー…」

「なら良いんだけどよ…
 悪かったな、言うのが遅くなっちまって。」




その後、俺は左之さんの言葉に適当に返事をして、自分の席に戻った。

千鶴が来れない理由は分かったけど、心の中はすっきりしていない。




……どうして左之さんに連絡が行くんだ?




その疑問が心にずっと、引っかかっり続けているのだ。





俺の携帯番号やアドレスは、千鶴だって知ってる筈だよな…?





久しぶりの再会からすぐに、千鶴は平助から携帯のアドレスと電話番号を聞いた。
元生徒だし…と断り続ける平助だったのだが、其処は千鶴の粘り勝ちだった。

アドレスを教えてからは、毎日の様に来ていたメール。





しかし――…





あれ…
そういえば、千鶴から最近メール来たか?





平助はすぐに携帯のメールボックスを開くと、丁度1週間前から毎日の様に来ていたメールが、その日を境にぴたりと止まっていることに気が付いた。





…………もしかして…





その瞬間、平助の頭に思い浮かんだのは…
千鶴に彼氏でも出来たのでは?という考えだった。







ズキンッ――…







……待て待て!!ズキンってなんだよ!
別にいいじゃねーか、千鶴に彼氏が出来たって!!
むしろお目出度いことなんだって!!
俺みたいな三十路手前の男を追っかけてる方がおかしいんだ…

相手どんな奴だ?
まさか変な男に捕まってたりしねーよな?
ちゃんとした奴なんだろうな?
千鶴を幸せにするなら、別にどんな奴でも構わねーけど……

あっ!!
もしかして…左之さんか!?
だったら左之さんに連絡があった理由も付くし…

あぁぁぁぁぁ!!
もう気になって仕事どころじゃねーよ!!







平助はグチャグチャと髪をかき乱すと、携帯を手に職員室から出て行った。

そして、そんな平助を自分の席から見ていた原田が「手のかかる奴らだな…」と笑みを浮かべていた。


































「………もしもし、千鶴?」


この日俺は、初めて彼女に電話をした。
電話の向こうでひどく驚く彼女が、声ですぐに分かった。


「今、大丈夫か?」


to be continued...

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