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□A
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朝、目が覚めると同時に感じた胸騒ぎ。

森が騒ぐ。
動物達が騒ぐ。


そして、屋敷内の人間までもが慌ただしい。


その慌ただしさを感じたと同時に、千鶴の部屋の扉が勢いよく開かれた。
扉にはいつもの民族衣装ではなく、戦の為の衣装を身に纏い、刀を持つ平助の姿があった。




「姫、ご無事でしたか!?」

「うん。この騒ぎ一体!?」




平助の顔を見れば、今の状況が尋常じゃないということが、千鶴にはすぐ理解出来た。




「どうやら…
 森の結界が破られた様です。」

「結界が!?」

「おそらく、術者が関っているかと…」




森には人を迷わす様に、結界が張られていたのだが、それがどうやら術者によって破られた様だ。

術者は依頼を受ければ、様々な結界を張り、またその逆もしかり…

何代にも続き張られた結界は、数日掛けて、またこちら側には分からない様に、着々と破られていたのだ。

そして結界が破られた今、もうこの国は安全では無くなった。




「今すぐ逃げる準備をして下さい!」

「…でも…」

「おそらく狙いは姫様です。
 だから、早く準備をして下さい。」

「平助は?」




心配そうに千鶴は平助を見る。
今まさに、自分が狙われているというのに…
彼女は最愛の人の心配をした。



――…馬鹿だな、お前は…



平助はそんな千鶴を安心させる為に…
そっと、千鶴を抱きしめた。




「俺は大丈夫だから。
 千鶴の傍に居て、守ってやるから。」

「………うん。」

「よしっ!準備をっ…!?」



準備をするぞ、というその言葉を平助は最後まで言えなかった。

後ろから殺気を感じたのだ。
そして、その瞬間何かが二人に向かって飛んできた。




「千鶴!!危ねぇっ!!」

「――…っ!!」




平助は千鶴を庇いつつ、柱の陰へと逃げ込んだ。二人が居た場所には数本の矢が撃ち込まれていた。




「お前達、一体誰だ!?」

「全て避けましたか…
 私達は隣国の者です。
 姫を頂きに参りました。」




そう言うと、千鶴の部屋にはゾロゾロと隣国の兵士達が侵入してきた。




「っくそ!!
 千鶴は誰にも渡さねーよ!!」

「ならば力尽くで奪いましょう。
 姫様には傷を付けるな!かかれー!」





ガンッ――…





そして…
刀と刀のぶつかり合いが始まった。


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