歯車T
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一度射してしまった曇りははれなかったけど、知った風にめちゃくちゃ言う私を怒ってもいいはずなのに、この人は私の心配をしてくれる。これだけでも、尊敬できないはずがないし、幸せを願う理由になるのにな。
...だめだ。
話題を変えよう。
それに望んでくれてるんだ。
敬語とか頑張ってやめよう。
「そーいえばロイさ...ロイ、今何歳なの?」
「23になるな。」
たった敬語をやめて、さん取るだけで、それだけのことなのに、嬉しそうに答えてくれる。
いろんなものを抱えて、重すぎて大変なはずなのに、ときどき見せてくれる笑顔に、優しそうな表情に、物珍しそうに探究心に満ちた顔に、頼もしい目に、色んな表情をするなと思った。もっと色んな表情をさせてあげたい。できるなら、ずっと笑わせてあげたい。ずいぶん年と不相応に大人びてしまった彼を...
そっか、イシュバール戦が終わるのは6年前のことになるんだ...
たしか本編始まるころには29だ三十路だってやり取りがあった気がする。
あれ?
ちょっと待って
......
「え、23?」
「あぁ。ひとみは?私より若そうに見えるが。」
「え、23??」
「.....見えないかね?」
「いや、そーゆーわけじゃなくてね、私のとてもよく知ってるロイさんの話が」
「ロイさん?」
「いや、ロイの話は、確か29〜30の頃の話なのよ。」
「...」
「あの、それで、ロイ=29歳ってイメージがあって、私より年上ってイメージがこびりついてたから」
「つまり今の私はひとみより年下だと。」
「うん、それで少しびっくりしちゃった。私は27〜。」
「え”」
「見えない?」
「見えないな。私より若いかと。」
「...正直だね。」
なんだか笑えてきちゃった。
二人揃って笑いだす。なんだこれ。
「ロイ、私にできることあったら何でも手伝うから、一人でしょい込み過ぎないでね。」
「私を見えるのがひとみでよかったよ。」
嬉しいこといってくれるなこの人は。