歯車T
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もう夜も頃合いだったから、ひとみに食事について聞いてみた。
婚約者が今日帰ると言っていたから、何かしら影響が出るだろうと確認も込めて。
婚約者の存在を思うとそれまで複雑だった気持ちが、
ひとみの口から和真と名が出たことで、よくわからない感情から私の知っている感情であると認識することができた。
あぁ
私はひとみが好きなんだ
自覚してすぐに、ひとみは人のものだと感じさせられた。
久しぶりの婚約者と食事をとるのは当たり前だろう。
この人の幸せの邪魔はしたくない。
守りたいと思ってる人の笑顔の障害にはなりたくない。
早くに気が付けてよかった。
この気持ちにブレーキをかけることができる。
二人で食べているところはあまり見たくないなと思うものの、そんなわがままは通用しないだろうな。
とりあえず、
二人で一緒にお食べと
私は先にもらうと伝えると
一人で食べさせたくないからと一緒にすいかを食べてくれる。
辛い思い、さみしい思いをさせたくないと
見えないふりをしたくないと言ってくれる。
甘えていいと言ってくれる。
そんな配慮が
一つ一つの行動が
また私を満たしていく。
...ブレーキをかけなければ。
これ以上魅かれることがないように。
そうだ。
普通にこうして接するだけで
こんなに癒してくれるんだ。
こんなに幸せをくれるんだ。
普通ならこうして出逢うことはなかった。
出逢い、惜しみなく微笑んでくれる。
守ろうとし、心配してくれる。
幸せを願ってくれる。
これ以上何を望む?