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いかんとわかっていても、だからと言って状態をすぐに切り替えられるわけでもない。

困ったな...

そりゃ苦笑いもこぼれてくるさ。



...



そういえば、
昨日から寝ていないのか。
あれから部屋も出ずにずっと籠っていたしな。

顔でも洗おう。

何もしなければ、ずっとこのまま引きずってしまうだろうし。
...運のいいことに今はまだ時間も早い。
ひとみたちも寝ているだろうから、部屋を出ても今の状態で会わないですむ。



スーッ



静かに襖を開け、リビングに出ると静かな空間が広がる。

ここはこんなに静かで広かったのか...
今まで気付かなかった。

少し寂しさを覚えると同時に、そう感じた理由がすぐに思い浮かんだ。



ここが静かに感じなかったのは

ここが広く感じなかったのは

私が起きている間はいつもひとみがここにいてくれたから。



他の部屋に用事がなかっただけのことかもしれないし、寝室はあくまで寝るだけの部屋なのかもしれない。

いつもこの部屋で過ごしているのかもしれないが



いつでも私が

ひとみを呼べるように
甘えられるように
助けを求められるように
一人だと感じないように
ここが私のい場所だと安心させるように

そうするためにいつでもここにいてくれていたのではないかと考えてしまう自分に驚かされる。



いつも横に当たり前のように居てくれたことに気付き、締め付けられる胸。

あぁ、私は幸せ者なのだなと思う。
そう頭で理解しても、
心はまだまだ足りないと彼女を渇望しているから
欲深い生き物だと自分の側面を垣間見た。


ハハッ


彼女と出逢い、
今まで意識していなかった自分の、様々な新しい一面に気付かされる。

いっそのこと開き直ってやろうか。

そうすれば何か変わるかもしれない。







考えながら脱衣所へ向かい蛇口を捻る。

食後部屋に戻ってずっと和室にいたということは何もしていなかったんだということを思い出し

顔を洗ってそのまま髭を剃り、歯を磨いた。

重ねられているきれいなタオルを手に取り顔を拭くと、少しスッキリした気がする。


夜中は人を鬱にするというが本当なのかもしれないな。

それが本当で、
私が悩んでいたのもこの時間帯だけで、
朝に染まってきているこの時間からはそんな悩みも鼻で笑い飛ばせるぐらいになっていたらいいと思う。


顔を拭き終え、
タオルを置こうとすると、
綺麗に折り畳まれた私の軍服が置かれていることに気がついた。

手に取ってみるとほのかにいい香りがする。

...まさか

もう洗って乾かしてくれたのか?
いつの間に...?
こんなに早く、洗って乾かせるものなのか?



すごいな...

この世界の技術と彼女にまた感心させられる。







顔を洗い
髭を剃り
綺麗に洗われた軍服に腕を通して
リビングへ戻り
カーテンを開けてみる。

差し込まれる明るい光。
窓の向こうにはもう赤い色はなく、水色から黄色へとグラデーションがかかっている。

少し心が落ち着いた気がした。

ひとみのいるこの世界は、こんなにも美しいんだな。
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