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和真を見送ってからリビングに戻り、和室の前に少し前かがみに立って深呼吸を一つ。

昨日の今日だ。
ロイが残してくれたメモのお陰で心は軽くなったけど
やっぱり緊張はするもので。

必要以上にドクドクなる心臓に気付かないふりをして、襖の向こうで寝ているだろう彼に声をかける。



「ロイ?おはよう、起きてる?」

...

「ロイ?朝だよ?ご飯できたけど食べれる?」

...

「あの、ロイさん?」



返事がない。
寝ているのかな。
嫌な予感が頭をかすめるけど、疲れて寝てしまってるのかもしれないし、先に食器にご飯をもってしまうことにし、台所へ。

食欲はないから用意するのはロイの分だけ。
でも一人分のご飯の用意なんてすぐにできてしまって、
またすぐに和室の前に戻ってくることになった。



「ロイ?」



何度読んでも返事がない。
やっぱり嫌な予感がする。
頭の中をそんな予感がしめていく。

ただ疲れて熟睡しているだけなのかもしれないし、そうならもう少し寝かせてあげた方がいいとか思うけど
傷口がいつの間にか急に縫われて回復していたように、急に悪化して動けなくなってるのかもしれないと不安が押し寄せる。



「ロイッ!大丈夫!?ごめん、開ける!!」



そう考えてしまうと、もういてもたってもいられなくて
叫ぶように中に声をかけて襖に手をかけた。



ダンッ



でも中には誰もいない。
苦しんでるロイがいなかったことは嬉しいけど

でも

ここにいるはずのロイがいない。



え?

どこ?

ロイ??



そのままにされている布団とテーブルとPC。
その周りにあるはずの本はない。

いるわけがないって想いつつも、押し入れの中を確認して、やはりいないことに冷静さをなくして行く。



「ロイどこ??」



痛みだすお腹を押さえて、家の中を探す。

リビングダイニング台所、いない。
さっき行ったトイレにも念のため行ってみたけど、いない。
寝室にもいるはずないし、他の空き部屋にもその姿は確認できなかった。
お風呂に脱衣所にも、いない。



...

いない...

どこにいるの??



ふと脱衣所でロイにかしてた部屋着が目に入る。
なんでこんなとこに...

...

軍服は!?

ハッとして軍服を置いていたところに目を向けると、ロイがいなくなったのと同様に、軍服までなくなっていた。

ちょっとまって、靴...さっき和真見送った時玄関にロイの靴あったっけ...

湧いてきた疑問に玄関へ急ぐと、やはりそこにはなくて、全身の力が抜けていく。



なんで...

なんでいないの?

ここにいたくなくなったの?

だからどこかにいっちゃったの?



違うとわかりきっているような疑問が頭に浮かんでくる。

リビングに戻ると、さっきのロイからのメッセージを手に取って、和室へ入り、目を通す。



ロイ、どこに行っちゃったの?

ロイの世界に帰っちゃったの?

それなら喜ばなくちゃいけないけど、
なんでこんなに悲しいの?
なんでこんなに寂しいの?
なんで喪失感なんて感じてしまってるの?

昨日が昨日だったから?
帰ってるのなら、せめて帰る前にありがとうっていいたかった。



ロイ、本当に帰ってしまったの?

ロイ、本当に帰れたの?

...それならまだいい。

もし万一、

帰れたわけじゃなくて、

私にまでロイが見えなくなってしまったんだったら...



そう考えると大きな絶望感が襲ってくる。

そんなの駄目。
もしそうなら、あの人は私以上に絶望を感じてるはず。



私はどうしたらいいの?

私には何ができるの?



薬なんか飲まなければよかった...
頭が働かない。
体が重い。
副作用は出てるのに、痛みは酷くなってくる。

あの人が一人心細い思いをしてるかもしれないのに...
泣いてる場合じゃないと思うのに、涙が止まらなかった。
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