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「私は大丈夫だ。怪我なんかしてないし傷も悪化していない。
私はここにいるよ?」
「よかった。よかったぁ...朝からロイいくら探してもいないから、アメストリスに帰れたのかなって、思ったんだけど、
もしかしたら傷が悪化してるかもとか、も、しかした、ら、ヒック、私にまでロイのことが見えなくなっちゃったのか、とか、おもっちゃって、」
「それは辛いな...でも大丈夫だ。今こうしてお互いが見えているし、触れ合えている。私は怪我していないし、ぴんぴんしているだろう?」
「ッフ、ック、うん、よかったぁ...ロイ、ロイ、」
「ありがとう。だが私より君だ。出血してるところは見当たらないが、顔色が白すぎる。腹を押さえていたが、腹が痛むのか?他になにか症状は?」
「うぅぅぅ、おなかいたいよぉぉ、腰も痛いし、体も重くて言うこと聞かないし、頭フラフラするしおなか痛いし少し寒いしお腹痛いしお腹痛いし」
「そんなにか。病院、病院へ行こう。歩けるか?」
「歩けないもん。」
「じゃあ抱いていこうか...いや、振動が辛いか...そうだ、救急車というものがあると言っていたな。電話すれば来てくれるのだろう?呼ぼう。」
「いらないもん、いつものことだもん。」
「...へ?いつものこと?」
「ん、毎月、女の子の日の初日はこーなるの。重い方だから動けなくなったりはざらなの。薬飲んだけどなかなか効かなくて、副作用で眠気はくるのにおなかは痛いの治まんないし。」
「...毎月の女の子の日??」
「うん。」
「...なんだ、よかった。」
「よくないーいたいのにぃぃぃぃぃ」
「あぁ、そうだな。いや、なにかあったのかとか、事故でもあったのかとか、大けがでもしたのかと気が気じゃなかったから...すまない。」
途中安心したのか大泣きしだすひとみをあやして病院へ連れて行こうとするも
続けられた彼女の言葉に自分が固まったのがわかった。
女の子の日...
そうか。
あれか。
生理か。
そうか。
そうか...
よかった...
本当によかった。
ひとみの不調の原因がわかり
彼女が事件や事故に巻き込まれたわけではなくいつものことだと知って
体の力が抜けていく。
あぁ、よかった。
そう思うと同時にひとみからも同じように無事を喜ぶ声が聞こえてきた。
「ロイが無事でよかったぁぁぁ...もー心配で心配で...どこにいたの?」
「すまない...行き詰って気分転換に河原へ行っていたんだ。こんなことになるなら行かなければよかったな...」
「行ってもいいからちゃんと行くときは教えて?」
「心配させてすまなかった。」
「心配は勝手にしてるだけだから謝らないでいいの。」
「...あぁ、ありがとう。だがもう君から離れたりしないから安心してくれ。」
「なんで?やりたいことやっていいよ?邪魔はしたくないって言ったでしょ?今日は私こんなだし一緒に行くのは難しいけど、図書館も行ってきていーよ?」
「ありがとう。
だが、君のそばから離れたくないのは私の意志で私のやりたいことだ。
今回のことが毎月のものだったからまだ良かったものの、もしと考えたらもう気が気じゃない。顔を白くしてうずくまるひとみを見て気が狂うかと思ったんだ...
そばにいさせてくれないか?」
「...」
「だめかな?」
「...だめじゃない。ありがと、嬉しい。でも、勉強とか、自分のしたいことしてね。」
「あぁ。そうさせてもらうとも。」
私の答えを聞いて安心するひとみにやっと私も安心する。
不安そうな表情や涙の理由は、私をただただ心配してくれてのことだった。
朝、姿が見当たらない。
今までの非現実的で信じがたいことの連続を目の当たりにしてきたことも原因の一つかとは思うが
たったそれだけのことでここまでの反応を示してくれる人を、
どうして好きにならないでいられるだろう。
どうして離れるなんてできるんだろう。
そんなの無理だ。
ただでさえ離れがたいのに、毎月あるものとはいえ、こんなに弱っているこの人をおいてでかけるなど、私にできるはずがない。