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言葉に詰まった。

言葉に詰まったというより理解が追いつかなかったのかもしれん。

この人は今日のこの短い時間で、
何度私の心臓を止めるほどの衝撃を与えれば気が済むのだろう...




「ここで?」

「邪魔になるなら寝室籠るけど、ロイが嫌じゃないなら...」

「...」

「寂しいっていうか、一緒にいたい...」



...どうしよう。

いったいどうしたら!?

ひとみがおかしい!!



いや、おかしくはないのかもしれんが、
なんだなんだ一体何なんだ!
なんでそんなに可愛いんだ!

いくら不安になってくれたからといって
いくら弱って眠気で頭が働いていないからといって
いくら他意はないといってもだなぁ

そんなことを私に抱きしめられたまま私の腕の中で言うものじゃない!!

理性!

私の理性よ!

フル稼働してくれ!

そうだ!!
調子に乗るな私。
相手は今弱っているんだ。
それにつけいるようなことをして許されるものか。
きっかけはどうであれ、せっかくこうして甘えてくれたんだ。
安心して休めるように答えるのが私の務めだろう。
落ち着け。
大丈夫。
落ち着ける。
落ち着こうじゃないか。
だれか一度私を殴ってくれ。
そうだ、深呼吸しよう深呼吸。




スーッハー




「だめ?」

「駄目なわけがあるか。君が気にならないならいくらでも休むといい。私が使っている布団でいいのかい?」

「うん。ごめんね、わがまま言って。」

「気にするな。そんな可愛いわがままならもっと言ってもらいたいぐらいだ。」



動揺は悟られていないようで、謝りだすひとみを抱き上げようとすると、案の定自分で行けると抵抗を見せるが、短い距離だから尚更問題ないと半ば力ずくで抱き上げる。

横抱きにされるのは慣れていないのか、真っ白い顔に少しだけ血色を戻し、うーと唸り声を上げながら俯きつつもしっかりと私の背に腕を回すひとみに、
無意味に抱き上げたまま家の中を徘徊してやりたいと思ってしまうのは当然のことだと思う。

もう少し布団までの距離があってもいいのに...

まぁ実際そんなことをすればこの人の機嫌を損ねてしまう気もするし早くゆっくり休ませてやりたいので、
無駄に歩き回らずすぐに布団の上へ寝かせて布団をかけると、
手だけ布団の中からだして私の手をとる彼女にまたも鷲掴みにされるのは私の胸。



こうも簡単に私から平静を奪う人は今までいただろうか...

空いた手で顔にかかった髪をかき分けてやり、そのまま髪を撫でながら問いかける。



「他に何かしてほしいことはあるかい?どうしたら痛みは少しでもマシになる?」

「おなかあっためたら痛いのはマシになる...」

「布団もう一枚だそうか?」

「いらない。手あててあっためるので十分。」

「私の手を握っていたら手をあてれないよ?」

「また見失うんじゃないかって怖いし...。でもできるだけロイの存在感じてたいもん...それにロイの手、おっきくてあったかくて気持い。」
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