U

□51
3ページ/3ページ



私の手をとり自分の頬へあてて安堵の表情を浮かべる。

...これは誘われているのだろうか。
まぁひとみに限ってそんなことはないだろうが...

というようなことが今日は多すぎる。



素直になって甘えてくれるのは嬉しくてたまらんが、こうまで甘えてくれるとなると

生理初日は危険だな、彼女の身が...

今日そばにいられるのが私でよかった。

他の男にもこの顔を見せるのだとしたら、とても冷静ではいられんだろう。
その光景を想像しただけでも黒く醜い感情に覆われてしまいそうだ。



「ロイ、眠くない?」



眠そうに眼をしばしばと瞬きを繰り返しながらとろけそうな力の入っていない声で聞いてくるひとみは、眠さも極限まできているのだろう。
目を開けているのもやっとのようだ。

生憎、貴女が可愛過ぎて興奮してしまうわ、色んな感情が渦巻いてくるわで眼が冴えてしまった。
などと言えるわけもなく、簡潔にNOの返事をしようと口を開ける。



「いや、今は微塵も眠く、」

「一緒に寝よ?」

「...は?」

「ロイ、あったかいから、ちょっと大きいけど人間カイロになってくれたらきっと痛みもマシになると思うの。」

「えっ、いや...え??」

「きまりー。じゃあ早く布団はいってー。」

「いやっ、あの、しかしだな、」



口を開けたものの、またも遮られる。

いや、
本当にもう現状把握が追いつかないです。

だって
和真は?
再会できないであろう別れが待っているのがわかっているのに、
これ以上近づくのは自殺行為じゃないか?
私にとっても、おそらくひとみにとっても。

風邪でもひいたのかというくらい、顔にも頭にも熱がこもるし、破裂してしまいそうだ。
体もこれでもかというほど固まっているのに、全身が心臓になったかのように激しく脈打っている。

頭の中には根付いていた疑問が飛び交い、
体は馬鹿正直に反応する。

あぁ、これでもかというほどに動揺しているさ。



布団に入ってと、掛け布団をめくったひとみは私の手をひくものの、硬直した体は固く動こうとしない。

それを拒否ととったのか、目の前の彼女は悲しみをその顔に滲ませる。



「ごめん。そだよね。嫌だよね。ホークアイさんも国で待ってるのに...」

「...ん??なんで彼女のことを?」

「ごめんね、甘ったれすぎたよね。ごめん...」



急に悲哀に満ちていく表情で目をそらされ、先ほどとは違う意味で心臓を締め付けられる。

甘えてほしかった。
弱ってやっと甘えてくれたのに、
動揺ばかりしてすぐに応えられず衰弱したひとみをこんな顔をさせてしまった。

私は愛しい人に心配ばかりさせて、安心させることも笑顔にすることもできないのか...

なんて情けない...

その瞬間、何かが吹っ切れた気がした。








もういい。

もう何も考えん。

もとから考えるゆとりなどなかったかもしれないが

和真のことも
住む世界が違うことも
近い将来離れ離れになるどろうことも

もういい。

わからない先のことを考え、躊躇し、恐れて、かけがえのない人を傷つけるなど愚か者のすることだ。

私はひとみの笑顔をただ守り、感じていたい。






貴女が、ひとみが求めてくれるなら



求めてくれるもの全て捧げよう。








「後悔するなよ。」








自分に言い聞かせるための言葉か
ひとみにむけた言葉かもわからないが

一言そう言うと
彼女の後ろへ周って横になり
背後から腕を絡め
優しく抱きしめた。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ