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「あぁ、大丈夫だ。ひとみは?」
「あったかくて落ち着く。」
「腹はどうだ?」
「痛いけどさっきよりマシかなぁ...」
「よかった。」
「それにね。」
「うん?」
「なんかすごい安心する。」
「...」
「こやって抱きしめてくれて、手も握ってくれるから、ロイのあったかいの伝わってきて、ロイ消えてないんだって、ちゃんとここにいるんだって感じれてほっとする。」
「...そうか。」
「ロイのおかげなの、ありがと。」
あぁ、そうだった。
この人は生理痛だけでこんなに弱っていたわけじゃない。
私の体を、私の存在を心配し、不安になってくれていたんだ。
だから私の存在を確かめるようにこうして求めてくれているのか...
普段では絶対にしないような求め方をしてくれることで、どれほどの不安を感じてくれていたかが伝わってくる。
いかんな。
興奮していると頭が冷静に働かんから、そんな簡単な答えもわからなくなってしまう。
ひとみの言葉で、
情けない男の性や考えが一掃され、隠れて見えなくなっていたものがまた顔を出す。
なんだかもう、
家族だとか異性だとかそんなもの今はどうだっていい。
明け方まで絶望していたのが嘘のように、心が満たされている。
「ごめんね、私のが年上なのに、大変な時にこんなに甘えちゃって。甘やかしてくれてありがとね。」
「謝罪は受け取らんよ。
ひとみのおかげで今とても嬉しいし幸せを感じられているんだ。」
「そー言ってもらえると助かる...
回復したら私がいっぱい甘やかしたげるからね。」
「もう十分甘えさせてもらっているだが...」
「まだまだー。ロイばっかり私に甘えられてずるい。」
「ハハッ、なんだそれは。」
「私も、甘えられたいの。」
「...あぁ、ありがとう。」
「へへ、もー、ねれそ、かも...」
「よかった。ゆっくりおやすみ。」
「ん、ロイも休んでね?おやすみなさぃ...」
眠気に襲われながらもギリギリまで起きていたんだろう。
すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。
愛しい人が
私に気を許し
私の腕の中で
私に身を任せて眠ってくれる。
愛しい人とともに寝られるということは
こんなに幸せなことだったのだな。
これまで知らなかったことを残念に思う気持ちがないといえば嘘になるかもしれないが
初めてこの幸せを教えてくれたのがひとみであることに、心は喜びと幸せに包まれる。
これぐらいは赦してくれと心の中で断りをいれ
目の前にあるひとみの髪に口付ける。
どうか、早く痛みがおさまりますように。
ひとみの苦しむ顔は見たくない。
ひとみの寝息と、あたたかなぬくもり。
胸を占める彼女が与えてくれる幸せ。
それに一睡もしていなかったことが手伝って、気がつけば私も眠りに落ちていた。