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「あ、あの、ロイさん。」
「どうした?」
「ありがとう、落ち着いた。」
「そうか、よかった。」
あれ?
なんで?
放れるために、背中に回していた手を放して、軽くロイの胸を押したんです。
普通そこで放れますよね?
なんで背中ぽんぽんて叩いてくれてた手を止めて抱きしめてくるの?
誰か!
誰か私が入るための穴を掘ってください!
ほんと切実に!
恥ずかしすぎて火でそう!
「ちょっ、あの、放してもらっていい?」
「何故?」
「だって、あの、恥ずかしいし、謝りたいし、」
「なんでひとみが謝るんだい?」
「だって、生理中で情緒不安定になったからって、あまりに我儘でしたことが滅茶苦茶だったから。」
「したこと?」
「あの、その、」
「ん?」
「一緒に寝てもらったりとか...」
「あぁ、昨日は寝てなかったからね、おかげで私もよく眠ることができて、読書にも集中できたよ。ありがとう。助かった。」
「でも、」
「もう少しだけ、このままでもいいかい?」
「?」
「もう少しだけ...」
「...何かあったの?」
「いや...いや、そういうわけじゃないんだ...」
「...さっそく約束守ってくれるなんて、ロイはいい人だね。」
「なんのことだい?」
「今度は私が存分に甘えさせる番だもんね。少しどころか、どんだけでもいーよ?ロイも安心して落ち着けるまでいくらでも抱きしめててあげる。」
「...ありがとう。」
胸を押してた手をまた背中に回して抱きしめると
また少し力を込めて抱きしめ返してくれる。
今、昨日寝れてないって言ってたし、昨日の夜はだいぶ辛そうだったし、きっと私には想像もできないぐらい精神的にもきついんだろうと思う。
少しでも落ち着くようにって
背中をポンポンってし返した。
ロイが私にしてくれたみたいに。
このときに気付いていれたらよかったのに。
こんなロイは初めてだったんだから、その異変とその原因をもっと知ろうとするべきだったのに。
そしたら少しでも早く、少しでも何かできたかもしれないのに。