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そんなに喜んでくれるなら、夜も私が作ろうと言えば断られる。
そこからは、もう私たちの間ではお決まりになってしまったんじゃないかと思えるようなやりとりが始まった。
『君のために』
『あなたのために』
『支えたい』
『甘えてほしい』
お互い望むことは同じなのに
お互いが望まれることを与えることに躊躇してしまう。
その理由も同じなんだろうか...
『この人の負担になりたくない』
『もうすでに十分すぎるほどたくさんのものを与えてもらっているんだ』
『これ以上与えられると...これ以上甘え、支えられ、距離を縮めてしまったら...近々訪れる別れを思ったら気が狂いそうになる......』
そう考えると何故かな。
笑いが込み上げてきた。
ひとみも笑いだし、二人の気持ちが同じならいいのにと心から思った。
笑いが治まった頃に
また笑顔を隠し、またも真剣な表情でひとみの口から「お願いが」と言ってもらえたことに不謹慎かもしれないが心が躍った。
そんなに畏まらなくてもいいというのに...
ひとみの願いなら『不可能なことでも可能にしてみせる!』と思えるほどなんだぞ?
「あのね、あの......私ね、強くなりたいの。強くしてください。」
「は?」
そして予想外の願いに意表をつかれ、変な声が出てしまった。
「...何故また急に?」
「精神面も強くならないとと思うけど、肉体的にも強くなりたいの...
健康的にっていんじゃなくて、もしものときに動けるように。
心配させないで済むように。
心配させて守られるだけなんて嫌だ。私も大切な人たちを守れるようになりたい。」
思いつめていたのはこれを考えていたからなのか...
私の目をじっと見つめてそう訴えかけてくるひとみから目が離せない。
声で、目で、表情で、雰囲気で、どれだけ真剣にそれを望んでいるのかが伝わってくる。
そんなに強く願っているのに、私が拒否するわけがないじゃないか。
「一つ約束をしてくれ。」
「約束?」
「自分を守ることを最優先してくれ。」
「...」
「君を危険な目にあわせたくないからね。大切な人を守るためとはいえ、自ら危険の中に飛び込むようなことはしないでくれ。」
「それって...」
「私もいつまで君をそばで守れるかわからない...それが何より気がかりだったんだ。
護身術程度ならすぐにでも教えられるし、覚えて練習を積めば使えるようになるだろう。」
「っ!!」
「ただし、体が回復してからだ。」
「うん!ありがとうロイ!大好き!!」
私が言葉を進めるにつれて、ひとみの目には涙が溜まり、大きな笑顔に包まれる。
あぁ...
私はこの人の笑顔を守りたいんだ。
私にもこの人にできることがあるんだ。
そう思うと少し、心が満たされた気がした。