U

□65
2ページ/3ページ



さすがにガッツリ時間をかけて料理するほどの気力はなかったから、簡単に用意できるものにした。

丼ものと味噌汁で。

すぐできるし美味しいしお腹も膨れる丼ものと味噌汁で。

野菜が少なくてごめんねと心の中で謝りながらちゃっちゃか作ってしまって、ご飯が炊けたらあとはあっためなおして盛るだけの状態にした。

あっという間に準備はできてしまったから、あとはお米が炊きあがったらロイを起して食べさせてあげよう。


んー...
暇だなぁ...
私も本読もうかなぁ...
本読む気力もないなぁ...
PCでちょっとニュースとか見とこうかな...
和室いったらロイの様子も見れて安心するし...


うん、そうしよう。


考えながら、散歩行けなくてごめんねとユキの頭をくしゃくしゃ撫でまわしていた手を止め、手を洗ってから静かに襖から顔を覗かせて中の様子を確認した。










うん、相変わらず気持ちよさそうに寝てる。





そう思えたらどれだけよかっただろう...





薄暗い部屋の中でもはっきりわかった

ロイの顔面からはこれでもかというほど真っ白くなっていて

その顔は、さっきの安心しきったような寝顔からは考えられないほど苦痛に歪められていて

布団から出ていたあるはずの左腕の存在を、この目で確認することができなかった





「ロイ!!!」





慌てて駆け寄って肩を叩いて呼んでも起きる気配はない。

落ち着け、落ち着いて私

救急法は勉強したことあるけど、こんな手が忽然と消えちゃってるような時のことなんてわかんないよ...



「ロイ!ロイ聞こえる!?」



肩を叩いて名前を呼んでも返事がうんともすんとも聞こえない。

ロイの口元に自分の頬を近づけると、少し荒い息が頬に当たる。

気道は大丈夫...

夢見てるの?
痛いの?
そんなにうなされてる原因はなに?

酷い汗かいてる。
布団着せたのがいけなかったの?

んーん、きっとそれが原因じゃない。

腕の状態見なきゃ...

肩から血が出てない。
いっこもシャツに滲んでない。

なんでないの?
肩口を確認しなきゃと思えば、徐々に肩も消えていく。



「やだ、消えないで」



色を失くして薄れていく肩に額を当て、そのままロイの体を抱きしめる。

お願い、消えないで...

そんな苦しそうな状態で消えてしまわないで...

ロイの世界に帰るのなら、せめて笑ってる状態で帰ってよ...



不安で、恐怖で押しつぶされそうになる

怪我も治ってないのに、抱きしめる腕に力が入る

力を入れたまま強張る体は、ロイの傷口が開くかもしれないとか、そんなこと考える余裕もなくて

押しつぶされそうな心は涙を流すゆとりもくれない

ただ震える強張った体でロイを抱きしめて、名前を呼び続けることしかできなかった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ