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......



...




いつまでそんな状態が続いたのか

2〜3分、いや、10秒にも満たない時間だったのかもしれない

でも私には何十分にも何時間にも感じられた





それを止めることができたのは

背中に感じる力強くて安心する二本の腕と

上から降ってくる優しい声を感じることができたから





「ひとみ...どうした?
怖い夢でも見たのか?
もう大丈夫だ、私がいるから。」





背中をトントンとたたかれ、強張っていた体の力が抜けていく

不安と恐怖に押しつぶされそうだった心がフッと軽くなって涙が溢れてくる



意識戻った

よかった

でも、まだよくない

腕、ロイの腕が...



力が抜けた腕をはなして距離をとり
ロイの腕があるはずのところに目を向けると
しっかりとそこに存在するそれに、涙が加速する。

よかった。

そうだよ、今ロイが背中に腕まわして抱きしめてくれてた時、二本の腕ちゃんと感じたもの。
今目の前にちゃんとあるじゃない。
大丈夫、さっきのはきっと見間違えかなんかで、なんの問題もないんだ。



...



んーん、そんなはずない
わかってる
だって、本当になかったもの
確認したけど見えなかった
触れられなかった
消えてた
その範囲は拡がっていこうとしてたもの
現実から目をそむけちゃいけない
逃げたら絶対に後で後悔するもの

どうして消えたの?
どうして戻ってこれたの?

わからない...

でもわかることは一つある。

わかると言うか、確かだと感じることは一つだけある。



きっと近いうちに

本当にロイは消えてしまう



消えて
どこに行くのか
ロイの世界に戻ることができるのか
それはわからないけど

近い将来確実にロイはここからいなくなる





腕からロイの顔へと視線を向けると、心配そうにこちらを窺いながら優しく微笑でくれてた。
「どうしたんだい?おいで?」なんていって腕を広げて待ってくれるロイの胸に飛び込んだ。



「ロイが、ロイがすごく苦しそうにしてて、体が消えていこうとする、夢を、みたの。」

「っ......そうか。だが大丈夫。私はここにいるよ?」

「ん...うん、よかったぁ」

「ハハハ、ひとみは心配性だな」

「ロイには負けるもの」

「そうだな...そうかもしれない」



本当のことなんか言えなくて

私以上に不安にさせちゃうんじゃないかと思ったらどうしても言えなくて

言おうとしても、いつの間にか私の口が、さっきまで起きていたことを『夢』だと伝えていた。
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