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真っ暗な闇しか見えなかった視界は急に光を取り戻し、その眩しさに目が細まる。



目が痛い...


目は痛いが......


この力は?


このぬくもりは?


私に触れられるものはいないはず...



体に感じる力とあたたかさの元が一体なんなのか、気になって仕方がなくて
眩しさに早く目が慣れるように細めた眼を凝らした。



少しずつ見えてきた光景から

ここがひとみの世界で
ひとみに借りている部屋で
障子から入ってくる光はなく、眩しさの元が隣の部屋から漏れてくる光なんだということ

そして

私にぬくもりをくれていたのがひとみだということがわかった。



顔に直接光がかかっているわけでもないのに何故こんなにも眩しく感じたのか...
どれだけの闇を感じていたのか...

私はアメストリスに戻ったのではなかったのか?
何故ここにいる?

わからないことだらけだ。

ただ感じるひとみの存在に心が落ち着きを取り戻していく。



この人はどれだけ私に光を与えたら気が済むのか...

当人にはそんな気はさらさらないんだろうことは簡単にわかるのだが

私の中でその存在はどこまでも大きく膨れ上がっていく

ただただ真っ暗な闇の中で虚無感、怒りや虚しさ、悔しさ、そしてどこまでも続く絶望に打ちひしがれていた私を
何度となくまた救いあげてくれる


いつも
私を救ってくれるのはこの人で
私に光や希望、あたたかさを与えてくれるのもこの人で

先ほどまで私全てを満たそうとしていたあの感情がなくなったわけではない
ゼロにすることはできはしないししようとも思わないが

そんな感情をも包み込むかのようにひとみが私の心を満たしていった








視線を動かしながら現状把握に努めようとしてなかなか本来の働きを取り戻せない頭で把握できたのは

私はいったいどうなっているのかということではなく

目の前で私にぬくもりを与えてくれているひとみの様子がおかしいということだ。



私の名を何度も呼ぶか細い声は止まることなく

その弱弱しい声からは考えられない程の力を込めて私の背に回されている細い腕に、
先ほどまでの絶望さえ感じていなければ、心地よいどころか痛く苦しいと感じるほどの力に何があったのかとことの異常さを感じる。

何故そんなに体を強張らせているんだ?

何故震えている?

一体何があった?

さっきまで...

さっき何をしていたのか...




......



そうだ。




ひとみは寝ていたんじゃなかったか?

徐々に思いだしてきた記憶では私を抱きしめている人は、
恥ずかしそうに、しかし安心したように布団に潜り込んで気持ちよさそうに寝入っていたはず......

その後一体何があってそうなったのかはわからないが、早くまた落ち着かせてやりたい。
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