歯車T

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昨日はよく寝られなかった。







夜...



いろいろ話しながらご飯を食べた後、二人とも疲れてるだろうからまず体を休めようと、すぐに解散することにした。

ロイは後片付けをしようとする私を気にしてなかなか動き出そうとしないから、そんなロイに、食洗機を紹介してみた。

「ふむ、これはいいな。」

なんて感心して中まで見ようとするからまたおもしろくて、テレビとか、PCももっと教えてあげたくなったりっていう気持ちがフツフツ湧き上がってきたんだけど、なんとか抑えることに成功し、

「でしょ?だから気にしないで部屋戻って今日は休んで?明日色々一緒に考えよう。」

なんて大人の女っぽくカッコつけて行ってみたら笑われた。




...かわいいなこいつ。




洗面所へ誘導して新しい歯ブラシを渡すと大人しく磨き、ふらふらとトイレへ行ったのを見て、普段からストック置いとくようにしてよかったと思った。そこまで不自由させないで済む。
そんなこと考えながら食器を食洗機に入れてしまって、明日の分にとお茶を沸かしていると、何故かまたロイが台所に戻ってきた。

「ひとみ、明日は何時頃に起きればいい?」

「あぁ、そうだなぁ...何時でもいいよ?いや、逆に聞こう。何時に起きたい?」

「ひとみはいつも何時に起きるんだい?」

「仕事ない時は、だいたい7時半くらいかな。」

「仕事?」

「うん、学校の先生してるの。非常勤だから今月いっぱいは夏休みで、ゆっくりできるの。」

「そうか...。ではもしひとみが起きた時に寝ているようなら起してくれ。」

「え?読んでも起きないぐらい熟睡してたら起さなくてもいい?」

「起きるさ。時間も惜しいからな。」

「わかった。じゃあ早く寝てくださーい。」

ここは戦も関係ないところなんだし、休めるときに休めばいいのにって思ったけど口に出しては言えなかった。
守りたい人たちを戦場に残してるんだ。一秒だって惜しいだろう。ロイや、今までとこれからをすべてではなくとも知っているから、勝手に心配してしまうけど、私のことを全く知らなかったロイにしたらありがた迷惑というものかもしれないし、傷つけてしまうかもしれない。

難しいな。




ロイを和室に押し込み、満面の笑みで「おやすみ」と言って襖を閉めようとすると、

ロイは「あぁ、おやすみ。いい夢を。」と返して布団へ潜っていった。






「いい夢を」だぁ??



なにそれ??



何人ですか?



日本人はそんなことそんな爽やかに自然に言わないよ?
昔ホームステイしたときにホストファミリーに言われたことあるぐらいで、この国の人はそんなの気障だって言わないよ??

そうだこの人は日本人じゃないんだ。
アジア系の顔してるからわかんなくなるよ。
くそぅかっこいいな。
絵になる。
そうだよ今までだってこの男はたぶんサラっと臭いことをいっていたが、心に余裕のなかった私は気付かなかっただけ。
どっちかっていうとハボックとかヒューズとか男くさい人の方がタイプのはずなのに。
ああ臭いセリフも好きだった。
だからだね。臭くて気障なセリフにドキドキしてるだけ。
尊敬してる人が可愛く見えたと思ったらかっこいいとこも見せてくるからギャップも手伝ってドキドキしただけ。
慣れないセリフのせいで顔が暑いだけ。
彼氏もこんなことサラっと言ってくれたらいいのに。...だめだわ、言われたら気持ち悪いわ。
あかんあかん、顔赤いかも。

初めはあっけにとられたものの
自分の変化に気付いて恥ずかしくなって急いで襖を閉めた。

「かわいいな」なんて襖の向こうから聞こえた気がしたのはきっと気のせいだ。
そういうことにしておこう。




ロイはあまり表に出さなかったけど、やっぱりだいぶキツかったみたいで、お茶が炊きあがる頃には熟睡してたみたい。
かすかに和室から寝息が聞こえる。

よく聞こえるな...

よっぽど疲れてたんだろう。
少しでも早く傷と疲れが癒えて、元の世界に戻れるように祈り、うるさくなったら悪いから、犬に遅くなってしまった餌をあげて私も寝室に向かった。
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