歯車T
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ひとみの目に
私はどう映っているのだろう。
少し気になった。
怯えた表情が続くかと思えば、不意に見せた笑顔がとてもきれいだと思った。
照れて赤くする顔に、可愛いと思った。
か弱く庇護欲がかりたてるかと思えば、力強くてこっちが助けられる。
よく気が回り、控え目かと思えば、子供のように感情表現が豊かで素直。
人と距離をとっていかと思えば、まっすぐにずかずかとこちらの中に入り込んでくる。
話で知っていたとしても、今日初めて会った私のために涙を流せるその心の優しさに
私がしてきたことを知りながらも、尊敬すると、幸せになってほしいと涙するそのあたたかさに
何故か私まで泣きそうになった。
ひとみがいってくれるほど、
素晴らしい人間ではないと
国を、人を守りたいと思い、名も知らぬ人たちを大量に手にかけたんだと
ろくに人を守れない、愚かでちっぽけなゴミと等しい存在なんだと...
まだあの地には守れたかもしれない人たちが残っているのに自分はこんなところにいる...
そう落ちていく自分を、彼女は包み込んでくれる。
立ち止まってる場合ではないと、前に勧めるように支え、背中を押してくれる。
まるで光だ。
本当に天の使いなのか...
絶望の淵に出会えたのが彼女でよかった。
そう心から感じた。
ひとみには不思議な魅力があるな。
婚約中の彼とやらが少し羨ましくもあるが、今はそんなことを考えている場合ではないな。
明日からのために、しっかり睡眠をとろう。
食事前に仮眠を取ろうとした時、存在しない神に祈りを捧げるまで弱っていた心は
ひとみのおかげで落ち着き、スッと眠りにつくことができた。