歯車T
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「よく眠れた?調子はどう??」
「おかげ様でよく休めたよ。体も昨日より軽い。」
「よかった。キツイ時はいってね。」
「そうさせてもらうよ。」
昨日より顔色のいいロイを見て、少し安心した。
できることなら血を作ってあげたいからお肉食べさせたいけど、調子悪い時は食べるのも辛いもんね...
とは言え、今日もご飯はあっさり目。いつもは食欲なくて朝は抜くんだけど、今日はせっかくロイと一緒だから頑張ることにした。
とはいっても、シシャモ焼いて、出し巻き焼いて、汁物作ってお浸しを冷凍してたのでパパッとした手抜きシリーズなんだけど...夜はがっつり作ってあげよう。
「いただきます。」
「いただきます。」
「さぁ今日はどうしようかな。」
「...」
「図書館でも案内しようかなと思ったんだけど、どう?」
「...」
「...苦手なものあった??」
並べられた料理を見て、私の手元に目をやり、フォークに手を伸ばさずにいるロイに声をかけると
「いや、苦手なものはないと思うのだが...私も...その...お箸というものを使ってみたいのだが...」
とおずおずと声をあげた。
相変わらず、ロイがかわいい。
なんだこの人は。
超かわいい。
いやね、私がよく知ってるのはもっと初さも子どもらしさも皆無になってしまった、どっしり安定感がある、夢に向かって茨の道を大爆走中の年上のロイで、それは昨日本を読み返して改めて思ったのよ。
あぁ、かっこよかったとも。
そんなロイがだよ、こんな...こんな...
その可愛さわけてほしい!!
でもダメよ私!
落ち着いて!
私の方がお姉さん!
「試してみる?」
「あぁ、使えたら便利そうだ。」
調子も良さそうだしまあいいかとキッチンに戻り、来客用のお箸を手渡してみると、
やだ嬉しそう。
なんだろう、母性本能をくすぐられるわ。
天然かな。天然だろうな。
この人絶対マダムキラーだ。私まだマダムって年じゃないけどさ。
喜んでおしえちゃう。
持ち方、動かし方を教えると、自分の手元を見て確認しながら少し練習し、実際に料理に手を伸ばしだす。
「案外難しいものだな。」
「そだね。正しい持ち方って難しくて、私も少し違った持ち方しちゃうんだけどね。」
「あぁ!!」
ロイの叫び声とともに形を崩す出し巻き卵。
そんなにふわふわに焼いたっけと食べてみるも、そんなことはない。もっとふわふわに焼けるようになりたいほどだ。
「力の加減が難しいな...」
「んだね。私もやっちゃうときあるよ。」
「だが昨日はあんな柔らかい豆腐を綺麗に食べていた。ひとみはすごいな。」
「そんなことないよ。ただの慣れ。こーゆー文化で育ってきたから、ある程度は使いこなせないとね。その変わり、フォーク使うのは下手だよ。」
話しながらも箸を進めるロイに、やっぱり器用だなと感心した。ちょっと練習したらすぐに私と変わりなく使えるようになりそうだ。
あぁ可愛い。