歯車T

□13
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夏休みという長期休暇期間に入っているため、図書館が開いているのは夕方の17時まで。

短い。
短すぎる。
籠って読み続けたいぐらいだ。





...籠る?

ふむ、ありだな。




私はひとみ以外には見えない。
つまり閉館後に残って読み続けても何の問題もないではないか。


素晴らしい。


そう思うや否や、いつの間にかいなくなっていたひとみが戻ってきた。


「ここ、一般の人にも本貸し出してくれるらしいから、借りてくるねー。上限7冊までだから、今ここにある5冊以外に何か追加する?」

「ひとみ、実は今日はここに残って資料やら本を読みあさろうかと思っているのだが。」

「却下です。」

「また即答か。何故?」

「けが、治ってない。
 疲れ、溜まってる。
 ご飯、食べれない。
 夜、寝ないで読み続ける。
 つまり、悪化する。
ということが考えられるのでダメです。嫌です。受け入れられません。そーゆー予定は組んでませんでした。」

「っしかし、」

「まだ無理ができるほど回復してないでしょう?今日は一緒に帰ろうよ。本借りて、ご飯食べて栄養補給してからまた本読んで、休んで明日に備えよう?
早く帰りたいだろうと思うけど、倒れたらどうしようもないよ?」

答える声の低さに、怒らせてしまったのかと一瞬血の気が引いたが、本に向けていたひとみの視線と反論しようとする私のそれが交わった時、すぐに理解した。

彼女はこんな勝手に怒る人ではない。
ただただ私を心配してくれているんだ。




さっきもそうだ。

図書館について本を読み始めているとき、ふと隣からの視線に気がついた。
集中していて最初は気がつかなかった。無視して読み進めようかとも思ったがそれをできるはずもなく、気付いてからは気になって仕方なくて前に進まなかった。

なにかあるのか聞こうとひとみに目を向け、声をかければ、何もなかったように返事をしてくるが、その眼からは今にも涙が落ちそうで...。

ひとみの涙は綺麗だが、できることなら見たくなかった。
心魅かれるが、苦しくなる。
涙を流させる原因を私の手で取り除いてやりたくて、笑ってほしくて、少し話してたら見えてきたひとみの想い。
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