歯車T
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久しぶりにのびのびと散歩することができた。
いやー癒されたなー。
あんなに急いで焦ってビビってたのに。
一人だとどうもネガティブが先行しちゃって、もしここで何かあったらユキが...!!なんて考えたりすることもよくあるんだけど、今日はそれもなかった。
赤から紫、濃紺へグラデーションする空
それを映す水面
川のせせらぎに木の葉の音
まだまだ鳴きやむ気配のない蝉の声
アスファルトからも顔を覗かせるエネルギー溢れる草花
綺麗だった。
癒された。
長い間見落としていたその魅力を感じることができた。
ロイのおかげ。
一人じゃないっていいね。
そばに誰かがいてくれるってそれだけでも安心できる。
それだけじゃなくて
ロイは私の心の叫びに気付いてくれた。
聞いてくれた。
自分のことのように傷つき、怒ってくれた。
好きだなぁ
本読んでた時から好きではあったけど
本物を知って、その人柄の温かさに、直に触れて感じて
もっとそう思った。
きっと他の登場人物の人たちにも直で会えたなら、こんなに魅かれていくんだろうな...。
そんな人たちにあんな悲劇は悲しすぎる...。
みんな幸せになれたらいいのにっていうのは不可能なのかな。
こんな時こそ、強欲の「ありえないっていうのはありえない」理論が成立したらいいのに。
「ひとみ、食事はどうする?君の彼氏が帰ってきてからかい?」
「あ、んーん、ロイには先に食べてもらおうかと思ってるんだけど。」
外も真っ暗になる頃には家に戻り、家の中に入れるためにユキの足を綺麗に拭く。
ハッハッハッハッという喉が渇いただろうユキに水を入れてやりながらそんなことを考えていると後ろから、丁度考えていた人の声。
いい声だね。
声フェチの私にはなかなかくるものが...なんてバカなこと考えながらも答える。
「和真、帰るのまだ時間かかるから、待ってたらお腹すくでしょう?」
「和真?それが彼氏の名前かい?」
「うんそう。」
「変わった名だな。
ロイには先にということは、ひとみはどうするんだい?」
「私は久しぶりだし、一人で食べさせるのもあれだから、和真と一緒に食べようかと思ったんだけど、ロイに一人で食べさせるのも嫌だしどうしようかな...」
「それなら和真とやらと食べるといい。久々なんだろう?邪魔はしないさ。」
「いや、邪魔とかじゃなくて...じゃーお言葉に甘える。ロイが食べてる間はスイカたべよー。」
「すいか?」
「ロイにもあるから安心してね。」
「ハハッ、あぁ楽しみだ。」
「じゃあちゃちゃっと用意しちゃいます。」
ユキをゲージに入れ、台所でさっき作った料理を温め直し、皿に盛っていると、ロイが運んでくれた。
...
こんな弟欲しいなー。
絶対ブラコンになる自信あるわ。