歯車T

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綺麗なタオル何枚かと
お湯を張った洗面器
それに
消毒液と
新しいガーゼやら包帯に
着替え

リビングに運び込んで服を上だけ脱いでもらう。




「おや、脱がせてくれないのかい?」

「朝は自分で部屋着から軍服に着替えてましたやん。」

ボケには突っ込みで返し、さっさと脱いでもらう。

「そんなこともあったかなぁ」
なんて飄々と服を脱ぎだすお兄さん。

まあ、きつそうなら手伝うけどね。

...にしても、なんか少しキャラ変わった??





服は自分で脱いでもらって、そこからは手伝う。

少しの汗と薄く滲んだ血で湿った包帯も解いていき、

現れたのは傷だらけの体。




昨日は出血と動揺と、処置に必死になりすぎて気が付かなかった。

肩と脇腹の傷も、まだ塞がりきってないんだろう、かさぶたは薄っすらとできていても
引き攣った皮膚に、傷口周辺は赤く、
すぐにでもまた開いてしまいそうだった。





大きな傷跡...



でも傷跡はそれだけじゃない。

戦場にいたんだ。

爆発にも巻き込まれたって言ってた。

少佐という地位なんだもの、軍に入って短いわけがないはず。





まだ真新しい傷跡も

少し古い傷跡も

よく見ればたくさんあった。





目の当たりにした多くつけられたその跡に、

焔の錬金術師とはいえ

いつ死んでもおかしくなかった状況だったんだと

血の気が一気に引いていった。




物語なんか関係ない。

話通り進む保証なんてないんだ。




怖いと思った。



ロイが死んでいたかもしれない。

これからまた戦いに戻ってしまったら

今度こそ死んでしまうかもしれない。

自分の心より、体より、命より、他人を優先できてしまう人だから...。

人の為に生きれる人だから...。



そんな事実が怖くてしょうがなくなった。



そして

そんな危ないところに帰ってほしくないなんて、少しでも思ってしまう自分も怖くなった。

この人は、そんなところだからこそ一刻も早く帰りたいと焦燥していたというのに。

やっぱり私は私が嫌いだ。
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