歯車T

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「でも、でも、体いじょ、に、心が、痛かったでしょ、う?つらか、たでしょ?」

「っひとみ...」





拭いてもらったらというより、
肌を見せたら、
傷跡を見せたら、
平常の状態のひとみに恐怖を感じさせてしまうかもしれない。
優しい人だから、傷ついてしまうかもしれない。
悲しませてしまうかもしれない。


だから自分ですると伝えたというのに...


私の包帯を解き、静かになったひとみに目を向けると

案の定

歯を食いしばり、目に溢れんばかりの涙を湛えた彼女がいた。



そんな表情にさせたくなくて
そんな気持ちにさせたくなくて
断わった。



でも

断わり切れずに
彼女の好意を受け入れてしまった自分に腹が立つ。

なんと浅はかなのか。

笑っていてほしいと、怖がらせて傷つけていては世話ない。

私のせいで
彼女の瞳から溢れ出してしまう綺麗なその雫を私に拭う資格はないのかもしれない...

だがそんなことよりも早く笑ってほしくて、
落ち着かしてあげたくて、

その綺麗な頬に手を伸ばして涙を拭い
言葉を投げかけていく。



すると

涙ながらひとみが必死に言葉にするのは、
体とそれ以上に私の心へ対する心配の言葉。


自分が傷ついた故に出てくる涙ではなく
恐怖からくる涙でもなく

私を思い、心配しての涙。





どうしてこの人は...





目頭が熱くなる。

だめだ。

冷静でいなければ。





必死に自分の気持ちを抑え込もうとしていると
私の手に伸びてくるのはひとみの綺麗な二本の腕。
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