歯車T
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バタンッ
「なに、どーしたん。そんな急いで。」
「んー?ご飯の準備できてるし、久しぶりだからお出迎え。」
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
リビングのドアを勢いよく閉めて久々の挨拶を交わす。
うん。
久しぶり。
ちょっと照れる。
だが照れている場合ではない。
正直照れもするが、今している緊張には敵うまい。
話しながら背広やカバンを受け取る。
そのまま脱衣所に向かって、服を着替えて手洗い等々を済ましに行く和真を追いかける。
「どーしたん?」
「なにが?」
「いつも出迎えなかったり、着替えるのにまでついてこんやん。」
「だって、さみしかったし...。」
パサッ
「あ、今日ね、火事があったんだって。そこの大学の近くで。ニュースにはならなかったけど。」
「ふーん。」
「んでね、大学生がけっこー一人暮らししてるアパートだったみたいで、今夏休み入ってるでしょ?」
「みたいやな。」
「昼ごろだったからもあって、帰省してる人も多かったし、残ってる人も大学に行ってたり出かけてる人多くてケガ人出なかったんだって。」
「よかったやん。」
シャー
「でしょ?ただ、気付くのが遅くなったみたいでものごっつい焼けちゃったみたいで住めなくなっちゃってんて。」
「そら大変やな。」
「あそこ、うちの従兄弟住んでるとこだったから、夕方『帰る家なくなった』って珍しく助けを求めに来たよ...可哀そうに。」
「従兄弟?この近くにいたん?」
「みたい。私も最近連絡取ってなかったから知らなくてめっちゃびっくりした。」
「そらびっくりするわ。」
「あ、お風呂つかる?」
「んー...せやな。」
「よかった。疲れてるだろーしつかるかと思って磨いてたん。お湯ためとくね。」
ピッ
ヴ-
よし!!
リビングつく前にサラッとそれっぽい導入できた!!
後はリビング入って見えたら泊まらせてあげてって頼めばいい!!
スラスラとこんな嘘つけるようになっちゃて...自分でビックりだわ。
女優になれるかな。
くつろぐ準備をし終えた和真を引き連れてリビングへむかう。
尋常じゃないスピードで、
耳に心臓くっついてたっけ?と思うほどうるさく鳴り響く
心臓の音
ドアノブを握り
小さな深呼吸とともにゆっくり回す。
見えろ
見えろ
見えろ
見えろ
見えろ
見えろ
見えろ
見えろ
見えろ...
お願い...
心の中で何度も繰り返して念じ、和真をリビングへ招き入れた。