歯車T

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「なに、どーしたん。そんな急いで。」

「んー?ご飯の準備できてるし、久しぶりだからお出迎え。」





玄関から、聞いたことない男の声とひとみの声が聞こえる。

その会話に耳をすませてみる。

会わなくても、
同じ空間にいなくても、
今玄関にいる時点の反応で和真に私が見えるかどうかわかる。



どうやらみえないようだな。



ひとみは必死に見えた時の為に予防線を張ってくれている。

必死に取り繕うその声には若干緊張の色がにじんでいるように感じられた。

いくら私のためとはいえ、
婚約までしている恋人に嘘をつくなど、
辛いことをさせてしまっているな...



だが...



だがもし私が見えるなら、
ひとみのように玄関に置いてある私の靴も見えるはずだ。

出張から帰ってきて見知らぬ男ものの靴が置いてあれば、

ひとみが言うような正確ならあの男はひとみに追求するはずなのだ。


しかしそれがない。

会話がトントン拍子で進んでいる。





...





ハハハッ

何だろうこの気持ちは。

ひとみにしか見えないことに運命さえ感じるな。

これで彼女が悲しまなければいいのだが...





...





目の前でいちゃいちゃされないことを祈って
和室のドア?を開けた。

見えないというのを確認したらすぐに部屋に戻れるように。









案の定、

部屋にひとみとともに入ってきた和真には私のことは見えず、
一直線にユキのもとへ向かっていじっている。




あぁひとみ

頼むからそんな顔しないでくれ。

私は大丈夫だから。

君がいればそれで十分だから。




安心させたくてひとみに頬笑み、
「和室に戻るから、すまないがドアだけ閉めてくれ。」
と伝えて部屋に戻る。
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