歯車T

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久しぶりの和真との晩御飯。

ちょっと前まですごく楽しみにしてた。



同棲初めてまだ数カ月なのに

出張
出張
出張

そりゃ寂しいよ。
いちゃいちゃしたいよ。

仕事だからしょうがないのは理解できてるから大人しく待ってるけど...

だから今日、帰ってくるの、
本当に楽しみだった。
本当に嬉しかった。

色んな事があったから
いっぱい話して
いっぱい笑って
いっぱい抱きしめてもらって
心落ちつけたかった。





でもだめだ。





すごく楽しみだったのに
おなかもぺこぺこだったのに

今は
心は空っぽで
あったはずの食欲もどこかへいってしまった。



「どないしたん?」

「へ?」

「さっきから箸進んでへんやん。」

「どーもしないよ。あんまり食欲ないの忘れてたや。」

「目、赤いし。」

「実はさっきね、懐かしの本見てね、号泣してしまったんよ。冷やすの忘れてた。」

「...ふーん。」

「ごめん、なんでもないの。ほんとに。気にしてくれてありがとう。」

「えぇんやったら別にえーけどな。」

「あ、私のも食べてくれる?」

「腹減ってるから余裕。」


和真と向き合って座ったダイニングテーブルで取り繕うにもできなくて。
疲れてるのに気にさせてしまって申し訳なく思いながら、自分の皿にのている大きめのジャガイモさんを和真の皿に乗せる。
お肉もおまけに少しあげちゃおう。
糸こんにゃくはあげないけどね。
好きだから。

大げさではないものの、小声でボソッと噛みしめるように
「うまいっ。」
とか言いながら食べてくれる久しぶりのその姿に嬉しいと感じる心はあるけど、
どこか力の入らない心。









いつの間にか、
目の前のお皿は全部台所のシンクに運ばれていた。

疲れてるのに運んでくれてたんだ。
そんな優しさに、好きだなぁと感じつつ食器を洗いに行くついでに、声をかけた。


「和真お風呂入ってきー?」

「なんや、一緒に入らんのか?」

「ん、今日は疲れてるだろうし、一人伸び伸びと浸かって疲れ落としてきて。」

「んー、先入ってくるわ。」


...寝る前にマッサージぐらいしてあげようかな。
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