歯車T
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食後さっそく荷物をまとめて図書館へ向かうことに。
ユキには留守番ばっかりで寂しい思いをさせちゃうから、帰ってきたら散歩はしっかり行ってあげなきゃ。
ユキに「いってきます」と伝え、おやつをあげて急いで外へ出る。
じゃないと寂しさで鳴き続けるから。
玄関先で聞くあの嘆きのような鳴き声は心が抉られるから...
図書館終わったら買い物は早く済まして、急いで帰ろう。
そう思いながら自転車のかごに
昨日借りてきた本と
私が読むための大学の時使ってた本
それに二人分のお弁当に水筒+αを乗せる。
うん。
ちょっと重い。
前が重いとハンドルが怖いよねー。
ふらふらしやすいから。
うん。
安全運転でいこう。
ハンドルを持とうとすると、
もうそこには誰かさんの手が添えられていた。
「抑えててくれてありがとう。
もう大丈夫だから後ろ乗ってくださーい。」
「断わる。」
「断わることを断わる。」
「私はもう大丈夫だ。」
「ロイの大丈夫は大丈夫じゃないの。」
「ひとみが前に乗るというのなら、押して歩いて行く方がいい。」
「体に負担もかかるし時間もかかるから私前に乗りたい。いや、乗る。」
「乗らせん。」
「なんで。ダイエットしてるの。妨害しないでください。」
「妨害ではない。心配だ。」
「心配いらない。
やーせーるーのー。
やーせーなーきゃーなーらーなーいーのー。」
「痩せんでいい。今の状態がきっと一番いい。きっとじゃないな、絶対だ。」
「ロイはよくても私がやだ。」
「なぜ?和真にでも何か言われるのか?」
「締りが足りんとは時々言われるけど、そこは関係ない。私が今の体型嫌なの。私の為に痩せるの。」
「まったく。今のひとみの体の良さがわからんとは、和真もまだまだだな。」
「ロイは私の裸見たことないからそんなこと言えるんですー。私脱いだら凄いんだから。逆の意味で。」
「それはお目にかかりたいものだな。」
「見せれるレベルじゃないので無理です。っていうか見せれるレベルになれても無理です。」
「ひとみは私の裸を見たのにか?」
「裸違いますやん!裸に近かったけど全部と違う!」
「なら私も全部でなくていい。水着姿でも問題ない。」
「やだよ何いってるの!」
「ひとみは見ていいのに私はだめなのかい?」
「当たり前!」
「それは残念だ。
まぁ私の裸が見たければいつでも言ってくれ。ひとみになら大歓迎だ。」
「ロイがとーとー変態発言を!?」
「これは失礼。少しタガが外れてしまったようだ。しかし男はみんな変態だ。いつ暴走してもおかしくない変態も大勢いる。それは覚えていた方がいい。」
「そんなのわかってるもん!」
「なに!?それはそれで問題だぞ!?まさか、まさか複数の男に暴走されたことがあるというのか!!?でなければわかっているなどと、」
「もー話それてる!私前がいい!!」
「ひとみこそ話をそらすな!どこのどいつだ。どこのどいつにされた?すぐにでも消し炭にしてくれる...」
「もー!消し炭にしなくていいから!大丈夫だから!顔怖いから!発火布しないでいいから!それより私が前に乗って図書館行くんでしょ!?」
「そんなに大きな声を出していいのか?ご近所の方に変な目で見られるぞ?」
「小声で話すもん!」
「私がこっちにいる間は、和真がいない間は、君の笑顔は私が守ると決めたんだ。ひとみに変態行動をとり、心に傷を負わすなど、言語道断だ。男として赦されるものではない。お灸をすえてやらねば。」
「お灸、アメストリスにあるの?」
「あぁ、シンから少しな。あまり拡がって浸透しているわけではないが、愛用している者もいる。私は聞いたことしかないが安心しろ。火力はちょっと強めにしておくよ。」
「いや、ほんとに大丈夫だから。笑顔を守るって、そんな風に考えてくれてるのはすごくすごく嬉しいんだけど、ほんとに大丈夫だから。ロイが考えてるほどひどいことされてないよ?だから気にしないで?」
「クッ...なにかあればいつでも言うんだぞ?」
「うん。」
「無理するなよ?」
「うん。」
「溜め込むんじゃないぞ?」
「うん。」
「ひとみは優しすぎるから一人で背負いこみがちだからな...もう少し周りに甘える努力をしてくれ。その方が私は嬉しい。」
「うん、ありがとう。」
「よし。ではレディは後ろにどうぞ。」
「うん...じゃないから!!何自然な流れで前に行こうとしてるの!?せっかく感動してたのに!後ろはロイの指定席です!」
「私の指定席か...指定席を作ってくれるのは嬉しいんだが、そこに君が座ってくれるなら、それほどの幸せはないんだがな。」
「もーわけわかんない...」
「...負担がかかることを女性にばかり任せていたら、私のプライドがズタボロなんだよ。
わかってくれ。」
「わからん。わかりたくない。そんなプライド、弱ってるときぐらい折れちゃえ。」