歯車T

□30
1ページ/2ページ

食後さっそく荷物をまとめて図書館へ向かうことに。

ユキには留守番ばっかりで寂しい思いをさせちゃうから、帰ってきたら散歩はしっかり行ってあげなきゃ。

ユキに「いってきます」と伝え、おやつをあげて急いで外へ出る。
じゃないと寂しさで鳴き続けるから。
玄関先で聞くあの嘆きのような鳴き声は心が抉られるから...
図書館終わったら買い物は早く済まして、急いで帰ろう。

そう思いながら自転車のかごに
昨日借りてきた本と
私が読むための大学の時使ってた本
それに二人分のお弁当に水筒+αを乗せる。

うん。
ちょっと重い。
前が重いとハンドルが怖いよねー。
ふらふらしやすいから。
うん。
安全運転でいこう。


ハンドルを持とうとすると、
もうそこには誰かさんの手が添えられていた。


「抑えててくれてありがとう。
もう大丈夫だから後ろ乗ってくださーい。」

「断わる。」

「断わることを断わる。」

「私はもう大丈夫だ。」

「ロイの大丈夫は大丈夫じゃないの。」

「ひとみが前に乗るというのなら、押して歩いて行く方がいい。」

「体に負担もかかるし時間もかかるから私前に乗りたい。いや、乗る。」

「乗らせん。」

「なんで。ダイエットしてるの。妨害しないでください。」

「妨害ではない。心配だ。」

「心配いらない。
やーせーるーのー。
やーせーなーきゃーなーらーなーいーのー。」

「痩せんでいい。今の状態がきっと一番いい。きっとじゃないな、絶対だ。」

「ロイはよくても私がやだ。」

「なぜ?和真にでも何か言われるのか?」

「締りが足りんとは時々言われるけど、そこは関係ない。私が今の体型嫌なの。私の為に痩せるの。」

「まったく。今のひとみの体の良さがわからんとは、和真もまだまだだな。」

「ロイは私の裸見たことないからそんなこと言えるんですー。私脱いだら凄いんだから。逆の意味で。」

「それはお目にかかりたいものだな。」

「見せれるレベルじゃないので無理です。っていうか見せれるレベルになれても無理です。」

「ひとみは私の裸を見たのにか?」

「裸違いますやん!裸に近かったけど全部と違う!」

「なら私も全部でなくていい。水着姿でも問題ない。」

「やだよ何いってるの!」

「ひとみは見ていいのに私はだめなのかい?」

「当たり前!」

「それは残念だ。
まぁ私の裸が見たければいつでも言ってくれ。ひとみになら大歓迎だ。」

「ロイがとーとー変態発言を!?」

「これは失礼。少しタガが外れてしまったようだ。しかし男はみんな変態だ。いつ暴走してもおかしくない変態も大勢いる。それは覚えていた方がいい。」

「そんなのわかってるもん!」

「なに!?それはそれで問題だぞ!?まさか、まさか複数の男に暴走されたことがあるというのか!!?でなければわかっているなどと、」

「もー話それてる!私前がいい!!」

「ひとみこそ話をそらすな!どこのどいつだ。どこのどいつにされた?すぐにでも消し炭にしてくれる...」

「もー!消し炭にしなくていいから!大丈夫だから!顔怖いから!発火布しないでいいから!それより私が前に乗って図書館行くんでしょ!?」

「そんなに大きな声を出していいのか?ご近所の方に変な目で見られるぞ?」

「小声で話すもん!」

「私がこっちにいる間は、和真がいない間は、君の笑顔は私が守ると決めたんだ。ひとみに変態行動をとり、心に傷を負わすなど、言語道断だ。男として赦されるものではない。お灸をすえてやらねば。」

「お灸、アメストリスにあるの?」

「あぁ、シンから少しな。あまり拡がって浸透しているわけではないが、愛用している者もいる。私は聞いたことしかないが安心しろ。火力はちょっと強めにしておくよ。」

「いや、ほんとに大丈夫だから。笑顔を守るって、そんな風に考えてくれてるのはすごくすごく嬉しいんだけど、ほんとに大丈夫だから。ロイが考えてるほどひどいことされてないよ?だから気にしないで?」

「クッ...なにかあればいつでも言うんだぞ?」

「うん。」

「無理するなよ?」

「うん。」

「溜め込むんじゃないぞ?」

「うん。」

「ひとみは優しすぎるから一人で背負いこみがちだからな...もう少し周りに甘える努力をしてくれ。その方が私は嬉しい。」

「うん、ありがとう。」

「よし。ではレディは後ろにどうぞ。」

「うん...じゃないから!!何自然な流れで前に行こうとしてるの!?せっかく感動してたのに!後ろはロイの指定席です!」

「私の指定席か...指定席を作ってくれるのは嬉しいんだが、そこに君が座ってくれるなら、それほどの幸せはないんだがな。」

「もーわけわかんない...」

「...負担がかかることを女性にばかり任せていたら、私のプライドがズタボロなんだよ。
わかってくれ。」

「わからん。わかりたくない。そんなプライド、弱ってるときぐらい折れちゃえ。」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ