歯車T

□33
1ページ/2ページ




どうしてそんなに集中できるのか



理由は言わずもがななのかもしれないけど
それでもその集中力には驚かされる。

図書館についてから4時間弱。

着いてすぐに本を見つくろって、後はずっと本と睨めっこ。

昔から私は読むの遅かったけど、それにしてもロイの読み進める早さは目を見張るものがあった。

あの大佐がこんなに集中するのは珍しいことだったはず。

昨日の夜もこんな感じだったんだろうか...
だからあんな分厚い本を何冊も読めたのね...





サボり魔の女たらし。




そんなイメージを周りに植え付けながら
したたかに行動を起こす。
だから表面上はいつものらりくらりしていて
自分の本質は信頼しているごく一部にしか見せない。

そんな大佐が我をなくしたように周囲の目も厭わず何かに打ち込んだり行動に出たのは

ヒューズさんや
リザさんたち部下が危険に追い込まれたときくらい

だった気がする。



だから今回も

普段は飄々としながら、
私をからかったり
家事を手伝ってくれたり
心配して気を配ってくれたり
散歩にもついてきてくれたりしてるけど

こうして垣間見せる表情は
よほどのことなんだろうと感じさせる。



自分のことでいっぱいいっぱいだろうに

私のことなんかそんな気にしなくていいのに

優しい人。



そんなロイが大好きなんだけど
優しさが故に重い試練を背負ってしまうだろうこの人に、幸せになってほしいなと心から思う。





...





残念ながら私は集中力がきれてしまったので、お腹もすいてきたしいい場所を探すことにした。

私が席を立っても全く気付かないほど集中してる彼の息抜き&エネルギー補給のためにも、
せっかくだからリフレッシュできるようなところがいい。

ほんとにこの人は...
右腕になるような副官でも恋人でもいいから
早くブレーキになってくれるようなパートナー的存在ができたらいいのに。
ちょっと心配だわ。
大変な時にこそ自分のことを蔑ろにして倒れてしまいそう。

そう考えたら
なんだか胸がキュッと締まった気がした。

...きっとお腹がすいたのね。

早くいい場所見つけなきゃ。






思いが通じたのか歩き回って15分もしないうちにすてきなところを見つけた。

この大学、金かけてるなぁ...
人集めるのも大変なんだろうな。
お陰でこんな癒される場所ができたんだろうけどさ。

遠回りしてしまったけど、
そんなことしなければ、そこから図書館まで5分もかからない。
ちょうど図書館の裏っかわにあってすぐこれる距離。
ここなら移動に時間もかからないし完璧な気がする。

早くロイを連れてきてあげよう。
喜んでくれたらいいな。





すでに軽くできてしまった気分転換と
いい場所を見つけてしまった喜びに

炎天下の中の探索で感じた暑さや不快感はなくなっていて
ロイを迎えに行く足取りは軽い。





図書館に着いて
ロイのいる机に戻ってもまだ私の存在に気付かないほど集中してる彼に
声を出さずに誘うため、持ってきていた紙にメッセージを書いてロイの目の前に着きだした。

突然目の前に現れた紙に
一瞬驚いたかと思えば
すぐに私を見つけ出し
優しく微笑んでどうしたのか聞いてくれる。



うん。


年下には思えないね。


なに。


なんなの、その滲み出る包容力。



こんな弟ほしいと思ってたけど
こんなお兄ちゃんでもいいかも。
お父さんでもいいかも?

...それは言いすぎか。

でもなんか「ただいまー!」って抱きつきたくなる笑顔してくれるよね。

何回
「甘えていい」
「頼ってくれ」
って言ってもらえてもさすがにそれはできないけどさ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ