歯車T

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図書館で閉館まで本を読んだ後、
言葉にはしないものの、またも図書館に籠りたがる様子を見せるロイを昨日と同じように説得し、
ダッシュでスーパーへ向かう。
ダッシュといっても走ったわけではなく、
急ぎたいので自転車に乗ってだけど。
その運転をしてくれたのはロイだけど。





下り坂だから、今度こそ運転してやろうと思ったらまた軽く前の席の奪い合いになりかけて


スーパーまでロイ
スーパーから私

でいくことにした。


後ろに乗るのも久しぶりで、
しかも前にいるのはケガ人のロイだから
出発前
どこ持ってやろうとか悩んでいると
「抱きついてもいいんだよ?」
とお弁当の時の話を持ち出してくる。

地味に根に持ってるのか
からかってるのか
本当にそう思っているのかわかんないけど
なんだかニヤニヤ笑われているような気がして
力いっぱい傷口の上から抱きしめてやろうかと思った。

まぁそこは
私の方が年上なんだからと落ち着かせることはできたんだけど。

肩と脇腹とか、持ちにくいとこ怪我してくれちゃって。

さあどうしようかと思っていると
ロイは私の手をとり腰に回すように手を引き、上から手を乗せ固定する。


「ちょっ、ロイっ」

「しっかりまわして掴んでおかなければ危ないだろう?」

「ロイは私の後ろに乗るときこんな風にしないじゃない。」

「してほしかったのかい?」

「そーじゃなくて、ここまでしなくても大丈夫だから。」

「なにを言っているんだ。もしものことがあったらどうする?
安全運転は心がけるが、万一を考えるとこの方がリスクマネージメントに繋がると思わないか?」

「でもっ...
この乗り方するんなら私、降りて走る。
はーなーしーてー。」

「クックックッ、すまないね。
あんまり頬を赤く染めてくれるからつい。
しかし、ちゃんと掴まっていないと危険なのはわかっているだろう?
怪我の状態は昨日に比べるとだいぶいいんだ。落ち着いている。
だからいらん気はまわさず、しっかり掴まっていてくれ。」

「顔赤いのは暑いからですー。」

「クックックッ」


私は子どもか!
自分のセリフにも恥ずかしくなってくる。

もー...
やっぱり顔赤いのか。
我慢するかのように漏れてくる笑い声にちょっと投げ飛ばしてやりたくなった。
そんなことできないのはわかってるんだけどさ。

やっぱりからかわれていたのかと固定されていた腕を振りほどくと、腰に手をそえてみる。

痛そうな声も表情も一つもなく
当の本人は余裕そうに自転車をこぐ。

心配してたほど傷はもう酷くないのかな...
きのうはあんなに傷口痛そうだったのに...



おかしい。

痩せ我慢か?

お得意の痩せ我慢ですか?

家帰ったら様子見さしてもらおうかな。

昨日の今日でもう痛くないわけがない。



昨日のことを思い出しながら
安定した運転に身を任せ
この人はなんでもできるのかな
なんてバカなことを考えた。
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